高強度練後の回復促進方法「アイスバス」

【疲労・回復・睡眠】2012年7月17日 07:00

「高強度練」や「レース」でかなり高い負荷がかかった場合や「筋トレ」「ランニング」をした後に、筋肉がむくみ激しい筋肉痛に襲われることがある。このようなケースで「回復を早め筋肉痛をやわらげる効果がある」といわれている方法に「アイスバス」がある。これはいわば「水風呂」「冷水浴」にあたるもので、必要に応じて氷を入れて温度調整することから「アイスバス」と呼ばれている。■この記事は、旧サイトからの移行分です(2012.01.11の記事です)■

 

アイスバスのメカニズム

■通常の練習では不要

練習のあと筋肉がむくむのは、回復の正常なプロセスなので普通は問題ない。ロード・バイクの通常の練習であれば、筋肉のむくみが過度になることはないのでアイスバスを行う必要はない。

■「筋肉の過度なむくみ」の抑制に役立つと考えられている

しかし、かなり高強度で追い込んだ場合や、「ラン」「トレラン」「筋トレ」などで強い負荷がかかった場合には、むくみが過度になり回復が遅れ「故障」「風邪」の原因となることがある。アイスバスを行う目的はこの「過度なむくみ」を抑えることにある(アイスバスに入ると血管が収縮し、身体の表面から中心部に向かっての血流が促進され、過度なむくみを抑制するのに役立つと考えられている)。

■「3時間以上のライド」の場合効果が期待できる

Dailymationというサイトではアイスバスが効果がある練習の具体例例として「3時間以上のライドや」「1時間半~2時間以上のラン」を挙げている。

 

アイスバスの実施方法やコツ

■行い方

アイスバスの行い方はかんたんで、バスタブに腰までつかるくらいの水を入れ適温に調整し(必要に応じて氷を入れる)一定時間入る(入浴時間の目安は温度によって違うので、以下のガイドラインをご参照)。もし自宅の近くに海や川がある場合はそこに浸かるのでもよい。入るタイミングは練習後できるだけ早くで、できれば15分以内、遅くとも1時間以内には入ったほうがよい。アイスバスから出たら温かいシャワーを浴びて皮膚の温度や感覚を通常の状態まで戻す。

■入浴時間のガイドライン

水温 入浴時間
18度以上 30分まで
15~18度 20~25分
12~15度 15~20分
10~12度 12~15分
7~10度 8~10分
7度未満 回避

■気を紛らわせるためのコツ

アイスバスは冷たいのを一定時間ガマンしなければならないので、いかに気を紛らわせるかが大切になる。そのための効果的なコツには以下のようなものがある。

  • 上半身にはタオルをかけたりスエットを着るなどして温かく保つ。

  • 電話をする・ラジオを聴く・雑誌を読むなどする。

  • 回復食を食べる(ホット・ココアやスープを飲むのもおすすめ)。

 

アイスバス関連のYouTube動画

下のYouTube動画はランナーがアイスバスに入る様子を撮影したものだ(「水温が低すぎるのではないか」と思われるが、実際にどのように行うかの参考になるだろう)。

また下のYouTube動画ではプロ・トライアスロン選手であるダン・フーゴ氏がアイスバスの回復への効果について語っている。

 

注意点

■極端に低い水温では効果がない可能性がある

「アイスバスは回復の促進と筋肉痛の軽減に効果がある」との研究結果があり、実際にアメリカなどではランナーやトライアスリートを中心に利用している選手が多い。しかし2007年の研究では、重いウェイトを使った筋トレ後、「5度のアイスバスに1分間浸かった場合」と「24度の水に1分間浸かった場合」を比べたところ「アイスバスに実際にはプラス効果はなくむしろ筋肉痛が増した」との結果が出ている。これは上記ガイドラインから外れたレベルになるが、「極端に冷たいアイスバスに回復促進効果はない」可能性が高いので注意が必要だろう。

■科学的な検証が待たれるが「効果がある」との情報が多い

今後さらなる科学的な検証が待たれる点は考慮する必要があるが、エリート選手を中心に普及している回復促進方法であり「効果がある」との情報も多いので、高強度練のあとにいちど試してみるのも一案だろう。


参考URL

参考文献

  • SAGE ROUNTREE・『THE ATHLETE'S GUIDE TO RECOVERY』・P102~105・velopress