レースでは、ここぞという時にパワーを十分に出せるようにするために無駄なパワー・ロスを極力少なくするほうが望ましいといえる。具体的には、なるべく急加速のようなFTPを大幅に超えて筋グリコーゲンを大量に使うような動きを少なくすることや、そもそもペダルを踏んでいる時間をなるべく少なくすることが大切になる。しかしそれをどのように実現したらよいのだろうか。今回は、集団走行時になるべく「パワー・ロスを少なくするための位置取り」について『The Time-Crunched Cyclist』を参考に紹介する。
アップ・ダウンを含むコース・レイアウトのロード・レースで勝負の分かれ目になることが多いのが「上り」だ。L4~6のパワー・ウェイト・レシオが十分であれば大抵は対応できるだろうが、上りでの戦術やコツを熟知していれば「無駄に高出力を出す必要性」を減らすことができる。また仮に周りの選手に比べて多少パワー・ウェイト・レシオが劣っていたとしても、集団から千切れるリスクを減らすことができるだろう。今回は『Cycling FAST』を参考に、上りでの戦術やコツを紹介する。
グリコーゲン・ローディングの手法は1960年代から研究されているが、その間に新しい手法が編み出されたり、その効果や限界点についても明らかになりつつある(ただし科学的に結論が出ていない点もある)。今回は、グリコーゲン・ローディングの方法・効果・注意点などについての新旧を含めたさまざまな情報を整理した。
ゴール近くまで首尾よく逃げることができたものの、最後に残った相手が自分よりもスプリントが得意な場合、普通にゴール・スプリントをしてもまず勝ち目がないだろう。しかし、もしまだゴールまでそれなりの距離が残っているならば、勝ち目はあるかも知れない。今回は『勝つための自転車レーステクニック』を参考に「ゴール近くでスプリンターと一騎打ちになった時の対抗策」を紹介する。
レース中に速いペースが続きボトルを取れない状況や、タイムトライアルやヒルクライムでそもそもボトルを持たないレースの最中に、口がカラカラに渇き不快な思いを経験したことはないだろうか。口が渇いてしまうとそれが気になって集中力が欠けてしまいパフォーマンスが落ちるリスクがあるが、この口の渇きを緩和する実にかんたんなテクニックがある。それは、次のような方法だ。
レースで小集団になった時は、全員が協調してローテーションする場合が多い。しかし時には、明らかにまだ足が残っているにも関わらず先頭交代を拒否して着き位置に徹し、いわば「ただ乗り」を決めこむ選手もいる。これがゴールが近くなった段階の先頭集団であれば、ゴール・スプリントに向けて一人だけ足をためようとしている可能性が高いので、他の選手としては何らかの対策が必要になるだろう。今回は、そのような「ただ乗り選手」への対処方法を、『勝つための自転車レーステクニック』を参考に紹介する。
ストレッチにはさまざまな種類があるが、いちばん普及しているのが「反動をつけずに、息を吐きながらゆっくり静かに筋肉を伸ばしていく『スタティックストレッチ(静的ストレッチ)』」と呼ばれるものだろう。この静的ストレッチは過去何十年もパフォーマンスを向上させ、怪我や故障を予防する効果があるとして行われてきた。しかし、近年これと逆の研究結果が数多く示されている。今回は、『ストレッチまるわかり大辞典』『ダイナミック ストレッチング』を参考に、レース前や高強度の練習前に静的ストレッチをする時の注意点について紹介する。
練習では体力を上げるのに十分な刺激を身体に加えるために「しっかり負荷をかけて練習すること」が大事になる。しかしレースで少しでもよい順位でゴールするためには、少し奇妙に思えるかも知れないが、この逆を心掛ける必要がある。今回は、「レースでパフォーマンスをよくするためのコツ」を、アームストロングのコーチを長年務めたクリス・カーマイケル氏らの著書『The Time-Crunched Cyclist』より紹介する。
走行中に脇腹が痛くなったことがないだろうか。脇腹痛は初心者の頃に起こりやすいが、鍛えている選手でもまれに襲われることがある。脇腹痛は、従来「筋肉への血流量増加に伴う胃腸の血流不足が胃腸を痙攣させその振動が周囲の神経を刺激する」「横隔膜の痙攣(特に運動不足の人)」「脾臓の急激な収縮」などが原因ではないかといわれてきた。しかしNHKの行ったMRIを使った実験で「大腸の蠕動運動が小さくなる一方で、大腸内のガスが走る振動によって大腸の上部に上昇し、大腸の左右の曲がり角にたまり周囲の神経を刺激する」ことが明らかになり、これが主要な原因ではないかと有力視されている。今回は、この新説をもとにした「脇腹の痛み」の予防法と対処法を紹介する。
レースなどで足が売り切れるのは「筋グリコーゲン切れ」が主な原因といわれている。筋グリコーゲンがなくなると「短時間高強度に対応するための主要エネルギー源不足」に直結するので、アタックがかかった時などに反応ができなくなる。また筋グリコーゲンは脂肪の燃焼に必要な着火剤の役目もあるので、これが枯渇すると脂肪をエネルギー源として使えなくなり、低強度の運動を継続するのも困難になってしまう。また筋グリコーゲンがなくなると、筋肉を動かすためのカルシウムイオンに関する仕組みが正常に動かなくなり、足が動かなくなってしまうともいわれている。
ロード・レースでのパフォーマンスに大きく影響すると考えられる指標のひとつにパワー・ウェイト・レシオ(PWR)がある。これは体重1㎏あたりどれだけのパワー(W)を出せるかを表したもので、「W/㎏」や「体重の~倍」
のように記載されることが多い。なぜPWRがそれほど重要になるのだろうか。それは、他の条件が同じ場合、ある持続時間でのPWRが高いほど速く走れるからだ。また、アップ・ダウンの多いコースでのレースでは、登坂能力が勝負を分けることが多いが、それをもっとも正確に表すの指標がPWRである点も挙げられるだろう。今回はPWRの高さを最大限活かすための戦術と、それへの対抗策を『The Time-Crunched Cyclist』や『Cutting-Edge Cycling 』を参考に紹介する。
レースの大事な局面で足がつってしまい、どうにも踏めくなった悔しい経験をしたことがないだろうか。足がつる原因は、従来発汗による電解質不足と考えられていたが、これを否定するような研究結果があり、実際には科学的に解明されていないといえる。原因がはっきりしていないので、「これをすれば必ず足つりを防止できる」という決定的な方法は、残念ながら現段階ではない。しかし最近、足つり予防に役立ちそうな興味深い研究事例も出てきている。今回は、足つりのメカニズムとして現段階で有力な説や、予防や対処方法に役立つ可能性がある情報について紹介する。
TSB・CTL・ATLは、オーバートレーニングを防ぎながら計画的に体力アップを図るさいの、体調管理・計画立案や、重要レースに向けたピーキングを数値で管理できる優れた指標のひとつといえる。比較的新しいコンセプトなので、まだ研究の余地は残されているものの、現段階でもある程度参考になるガイドラインが示されている。今回は、『パワー・トレーニング・バイブル』や『鈍行・中目黒の自転車メモさん』のブログなどを参考に、TSB・CTL・ATLの活用のガイドラインや注意点に関する情報を整理した。
>年間トレーニングの計画や、ピーキング調整に使える指標のひとつにTSBがある。他方、WKO+などのソフトでは、TSBに関連する指標の過去の推移はチェックできても、将来のシミュレーションをすることはできない。今回は「どのタイミングでどの程度のTSSを積み上げれば、TSBとCTLを絶妙のバランスにもっていけるか」 をかんたんにシミュレーションできるExcelシート(試作品)を紹介する。
ツール5勝を始めとして多くのタイトルを獲得した伝説的なロード選手であるベルナール・イノーは、アタックについて「アタックが決まるか他の選手があきらめるまで、繰り返し繰り返しアタックをしろ」という言葉を残している。実際アタックはそうかんたに決まらないので、成功するまで繰り返し仕掛けないといけないことが多い。しかしやみくもにアタックするよりは、タイミングや場所を見計らい効果的にアタックしたほうが、成功率は高くなるだろう。今回は効果的にアタックするためのコツを『Cycling FAST』などを参考に紹介する。
長い見通しのよい下りでは、いかに空気抵抗が小さいフォームを取るかが大きなスピード差に直結する。以前、「長い下りで空気抵抗を最小化するダウンヒル・ポジション」を紹介したが、今回は、従来のダウンヒル・ポジションよりもさらに劇的な空気抵抗削減効果があるアグレッシブなダウンヒル・ポジションを紹介する。
チーム・メイトがうまく逃げ集団に乗りそのまま逃げ切ることをサポートする場合には、ブロッキングを行うことが重要になる。ブロッキングとは追走集団を分裂させたりペースを乱したりすることで、 ペース・アップを妨害する戦術のことだ。今回は、効果的なブロッキング方法について紹介する。
長時間のロード・レースや練習では、パフォーマンスの急激な低下を防ぐために水分とエネルギー補給が欠かせない。しかし補給食をたくさん食べすぎると胃腸に過度に負担がかかり、結果としてパフォーマンスの低下につながってしまうリスクがある。それでは、長時間のレースや練習中にはどの程度のカロリーを摂取するのが適当なのだろうか。今回は、運動中の炭水化物摂取量の目安を紹介する。
レース・シーズンのロング・ライドに有効な練習方法のひとつが、総合力を高めるトレーニング・メニューだろう。かけあいポイントなどを設定した実戦をある程度想定したチーム練習では、耐久走(L2)~神経筋パワー(L7)までの幅広い能力が自然と鍛えられることが多いが、単独練習の場合は、ある程度課題をもって取り組まなければ自分の好みに偏った練習内容になってしまうかも知れない。今回は『パワー・トレーニング・バイブル』より所要3時間と比較的コンパクトな総合トレーニング練習メニュー「WATTS-W3」を紹介する。
競輪学校で用いられている「キャパシティーとパワーのトレーニング理論」を以前紹介したが、『コーチング・クリニック 2007年 11月号』には、キャパシティートレーニングが10種類・パワートレーニングが6種類、かなり具体的に紹介されている。今回はその中から、キャパシティートレーニングのひとつ「5MC*」を紹介する。
ハンドル投げはゴールライン直前で、身体からハンドルを遠ざけるために腕を突きだすようにして距離を稼ぐ技術で、競輪やトラック競技だけでなく、ロード・レースのゴール・スプリントでもよくみかけるテクニックだ。今回はこのハンドル投げが「実は効果がないのではないか」という興味深い研究結果を『Performance Cycling: The Science of Success 』より紹介する。
シーズン初期のレースでは、レース用の身体ができておらず苦しい思いをするケースがあるかも知れない。今回はTRAINING4CYCLISTS.com などを参考に、レースの初戦からよいパフォーマンスを上げるための「プレ・シーズンのトレーニングのヒント」を紹介する。
レースやチーム練習でかなり追い込んだ直後に「普段単独で練習していると『きつい』と感じるパワーを維持するのが楽に感じる」といった経験をしたことがないだろうか。これはPAP(Postactivation potentiation:活動後増強*)とよばれる「事前に筋収縮を起こした後、筋収縮がより増強されるしくみ」によるものと考えられる。他の例を挙げると、10秒間限界に近いレベルで筋収縮をさせた後に、素早く強く筋収縮をさせるような動きをすると、「同じきつさ(主観的運動強度)であっても、より速く・力強い動きができるようになる」のもPAPの効果と考えられる。今回は、このPAPを利用したスプリント能力強化のための練習方法を『MAXIMUM PERFORMANCE FOR CYCLISTS』を参考に紹介する。
ロード・レースのプロ選手のブログには、残念ながらあまり具体的な練習方法が書かれていない場合が多い(一部の方を除く)。他方、2011年2月2日の畑中勇介選手(SHIMANO Racing)のブログには、読者からの質問に対する回答の中で、基本的な練習方法がひじょうに丁寧に具体例をまじえて紹介されている。今回は、その概略を一部補足を交えて紹介する(オリジナルのブログもひじょうに読みやすいのでおすすめです)。
ロード・レースでは、コース・レイアウトによっては見通しのよいかなり長い下りが組み込まれている場合もある。このような区間をより速く下るのに重要になるのがエアロダイナミクス(空気力学的)に優れたライディング・ポジション(ダウンヒル・ポジション)だ。
寒さが少しずつゆるみレース・シーズンが近づくにつれて、レース対策のトレーニングの重要性が増してくるが、その中でも重要なもののひとつがスプリント力の強化だろう。スプリント力強化のための「スプリント・ドリル」にはさまざまなバリエーションがあるが、今回は1984年のロサンゼルス・オリンピックのロード(女子)で優勝したコニー・カーペンター・フィニーが合宿で取り組んだという練習メニュー「イン・アンド・アウト」を『SERIOUS CYCLING Second Edition』より紹介する。
ロード・レースは勝負どころまでいかにエネルギーを温存できるかが重要になるので、燃費効率(エコノミー)が高いことは大きなアドバンテージとなるだろう。
レース・シーズンが近づいてくるにつれて、基礎期(ベース・ピリオド)を終えて強化期(ビルド・ピリオド)に移行していく人が多いかと思う。強化期はレースに必要な特定の体力を高めていく時期だが、「質の高い練習」を行うことが最も重要になる。それでは「質の高い練習」とは何なのだろうか。今回は、ジョー・フリール氏のブログを参考に「質の高い練習」について紹介する。
bike training tips.com には多くの練習メニューが紹介されているが、その中でもっともきついインターバルが今回紹介する「30-30」インターバルだろう。このメニューは、史上最高のタイム・トライアル・スペシャリストのクリス・ボードマンが、トラック競技のパーシュートとアワー・レコードで世界記録を出す準備期間に行った練習だという。その意味では、効果は折り紙つきといえるかも知れないが、RST方式のZ7(コーガン方式のL6上限)の高強度のインターバルを繰り返す相当にきついメニューなので、実施する場合は相当な覚悟で臨みたい。
ロード・レースではFTPが高ければ集団から千切れることはなくなるだろうが、勝つには「短時間の高出力」「アタックを掛けるタイミング」「下りのコーナリングのテクニック」「集団内での位置取りのセンス」「スプリント能力」などさまざまなスキルや身体能力を身に着けている必要がある。最終的に「運」も絡んでくるが、意外に重要なのがロード・レース前の試走で「勝負に関わるポイント」をチェックしておくことだ。
インターバル・トレーニングはロード・レースには絶対効果的だ。特にレースの最終版で勝負がかかった局面からゴールするまでや、先頭集団を追走する際のスピードを維持する能力は、圧倒的にこのインターバル・トレーニングで身に着けることができる。
同じ体重で出せるパワーが向上すると、走行速度は上がる。速く走れる能力が高いほどレースでは有利なので、パワーを上げることに集中してトレーニングすれば、レースで出せるパフォーマンスの上限(潜在能力≒体力)が上がるといえる。しかし優勝するのは、「最もパワーを出した選手」ではなくあくまで「最初にゴールした選手」だ。
運動を行う前にカフェインを摂取すると、その後数時間にわたって有酸素運動時における筋肉での糖質に対する脂肪の利用割合が増加する。その結果、筋グリコーゲンの使用量を節約できるので、持久力がわずかながら増強される効果が期待できるといわれている。
レースで勝つのは、最良のコンディションであってもひじょうに苦しいので、よほど集中し勝利への執着がなければ優勝するのは難しい。ロードレースでは、優勝した選手の方がその他の選手よりも疲労困憊しているケースが多いが、それは自分の力を100%出し切っている証拠といえる。多くの選手は自分の全力の70~80%までは呼び出せるが、100%まで絞り出せる人は少ないように思われる。しかしトレーニングでこのレベルを高めることはできる。
レース中に足が売り切れて集団から千切れてしまうのは、それまでに筋繊維と肝臓中のグリコーゲンを使い切ってしまったことが原因である可能性が高い。
『パワー・トレーニング・バイブル』では、レースで優勝する選手のパワー分布図の特徴として、「レース中のかなりの時間FTPレベルでパワーを出す一方で、FTPを超えたレベルのパワーを長時間出すことはない」という点が指摘されている。
パワー トレーニング バイブルの著者が、200名の選手に自己ベストのパワーが出た際のTSB(トレーニング・ストレス・バランス)を聞き取り調査したところ、持続時間が5分未満の運動については、TSBがプラス寄り(疲労が抜けた状態の時)にベストが出る傾向にあることが明確に確認された。
トレーニング効果には特異性があり、与えられた刺激に反応して体の適合が起こる(トレーニング効果が現れる)。つまり、トレーニングの強度や反復回数によってトレーニング効果は違ってくる。
1週間の練習の基本的な流れは、まず足が一番元気な初日に高強度・短時間の練習を行い、2日目に中強度・やや長時間練習、3日目に低強度・長時間のベーストレーニングを行い、4日目に休息を取るというのがワンセットになる。
ウォーミングアップには体温上昇による代謝の活性化・筋出力の向上や、呼吸循環系の応答性向上など様々な効果があることが知られている。