トレーニング1年目のヒント ~練習量、ピリオダイゼーション、週単位のトレーニング、ウェイト・トレーニング~【CTB】
トレーニング1年目のヒント
■練習量、ピリオダイゼーション、週単位のトレーニング、ウェイト・トレーニング
基礎体力を養成する時期は、慎重にトレーニングすることが何よりも大切です。この時期での高強度の練習や過度な練習量は、逆効果になってしまいます。
では、何を基準に適度な練習を判断すればよいのでしょうか。トレーニング1年目のヒントを紹介します。
■練習量
練習時間が、外的な要因によって限られる場合があるかも知れません。たとえば、仕事のスケジュールや他の用事を現実的に考えると、平日は1日に1時間以下しか練習できない場合もあるでしょう。トレーニングを集中的に行えるのは、週末のみである場合も珍しくありません。冬は日照時間が少なく、気候条件も厳しいので、トレーニング時間がさらに減ることもあるでしょう。
週の練習時間を控えめに見積もり、それに50を掛けた数字が、年間のトレーニング時間の概算値になります。52週ではなく50週にしたのは、病気や旅行などで練習できない状況をあらかじめ見越して、2週間分差し引いているからです。この時間は、自転車での練習に加えて、ウェイト・トレーニングやクロスカントリー・スキー、他のクロス・トレーニングを含めた総トレーニング時間です。50時間以下は四捨五入します。
次に、表8.4のピリオダイゼーション計画例の中から、自分の年間練習時間に該当するところを見ます。自分のトレーニングや回復の能力には問題がなくても、時間の制約がある場合は、この表に示されているよりも軽めの週を増やしたり、多めの週を減らしたりする必要があるケースもあるでしょう。この表はあくまでも目安であり、必ずしもこの通りに行わなくてもかまいません。
■ピリオダイゼーション
競技1年目では、7章で説明した基礎期を中心にしたトレーニングがもっとも効果的です。つまり、有酸素持久力、筋力、テクニック(スピード・スキル)、筋持久力の向上を重視します。これらは自転車競技においてもっとも重要な基礎能力であり、その習得には少なくとも1年はかかります。基礎能力をしっかり身につけてからでないと、スプリント・パワーや無酸素持久力などの能力を強化しても、大きな効果は得られないでしょう。
■週単位のトレーニング
週間スケジュールは、練習に使える時間、仕事の予定、競技歴、回復力、グループ・トレーニングの予定、ジムの開館時間など、様々な要素によって変化します。週の練習の組み立てには、絶対的な方法はありません。ただし、初心者は一般的に、1日1回練習を行い、週1回は休養日を入れると高い効果が期待できます。
■ウェイト・トレーニング
1週間に数時間しか練習時間がとれず、すべてのメニューを組み込めない場合は、まずはウェイト・トレーニングを削り、自転車に乗る時間を確保しましょう。初心者にいちばん必要なのは、有酸素系の体力向上のためのトレーニングです。ジムに行く時間があり、ウェイト・トレーニングが走行練習の妨げにならないのであれば、12章で紹介した身体適応期(AA)と筋力増強期(MT)のトレーニングを行います。まずは軽いウェイトを用い、正しいフォームで動作を行うことに専念します。これだけで、驚くほどの効果があるでしょう。2年目以降のウェイト・トレーニングでは、次の筋力強化段階に進みます。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。