サイクリストとして知っておきたい、効果的な筋力トレーニングを行うための重要な原則

【初心者のためのヒント】【筋トレ・ストレッチ】2016年2月10日 10:15

持久系アスリートが筋力トレーニングを行うことの是非については、いまだに人によって意見の分かれるところでもあります。私個人としては、指導したサイクリストが筋力トレーニングで大きな効果を得ていることを実感しています。特に、筋力がリミッターになっている選手や、平坦な地域に住んでいる選手には効果的だと思われます。重要なのは、筋力トレーニングへのアプローチの方法です。単に一般的な筋力トレーニングのプログラムや、ボディビルのプログラムに従うだけでは、サイクリストが最大の能力を発揮できるようにはなりません。サイクリストが効果的な筋力トレーニングを行うためには、以下の重要な原則に従う必要があります。

 

■サイクリング特有の筋群(主動筋)の動員と活性パターンに着目する

サイクリングにとっての主動筋とは、大腿四頭筋、ハムストリング、臀筋を含む足の筋肉など、レッグ・プレスなどをするときに使う筋肉のことを指します。

■複数の関節を使うエクササイズを行う

たとえばレッグ・プレスでは、足首、膝、股関節を使います。アームカールは二頭筋のみに動きを限定し、関節も肘しか使いません。ただし、レッグ・カールとレッグ・エクステンションは例外です。これらは、サイクリング関連の筋群のなかで、筋肉のバランスが悪い部位や弱点を鍛えるのに有効です。

■筋肉を必要以上に大きくせずに筋力を鍛える

サイクリングはパワー・ウェイト・レシオの影響を受けるので、必要以上に筋肉量を増やすことなく、より高い筋力を発揮できるように強化していきます。

■臀部と体幹の安定筋(臀部安定筋、腹筋、背筋)を鍛える

長時間ペダルを力強く踏み込むときは、足を安定させる臀部と体幹の筋肉を使います。これらの筋肉を鍛えなければ、パワーを発揮する能力や疲労抵抗力が低下し、怪我を起こしやすくなります。

■限界に達する前に運動を止める

ボディビルディングのプログラムでは、ウェイトをそれ以上持ち上げられない限界点まで、あるいはそれを超える地点まで運動を頻繁に行うことで、筋線維を肥大させます。そのために、補助者をつけて、限界点を2回ほど超える回数、ウェイトを持ち上げようとします。サイクリストは、筋力トレーニングの効果を得るために、それ以上ウェイトを持ち上げられない地点まで運動を行う必要はありません。私は、あと2回できるところで止めることをおすすめします。サイクリストではまれですが、大腿や臀部の筋肉が弱いアスリートは、「筋肥大期」(筋肉増量に特化した筋力トレーニングを行う時期)向けのトレーニングに取り組むとよいでしょう。これらのサイクリストにとっては、筋肉の増量によって増加した体重は、筋力の増加で相殺できます。ただし、足の筋肉を「バルクアップ(肥大)」させる場合も、限界点までウェイトを持ち上げる必要はありません。

■控えめにする

ウェイトトレーニングによって筋力は向上します。しかし、焦って筋肉をつけようとすれば、怪我によって練習ができなくなり、筋力を落としてしまうことにもなりかねません。サイクリストが無理な筋力トレーニングを性急に行うと、膝を傷めるリスクが高まります。同じく、ジムで張り切りすぎると、背中や肩、足の付け根を傷める場合があります。筋力トレーニングは、自転車でのトレーニングを補うものだと位置づけましょう。筋力トレーニングによって、自転車のトレーニングが妨げられるようでは本末転倒です。

■正しいフォームで行う

筋力トレーニングのフォームが不適切だと、怪我をしやすくなり、望み通りに筋肉を鍛えられなくなります。正しいフォームがよくわからなければ、有資格者のコーチやトレーナーの指導を受け、自分のフォームが正しいことを確認できるようになりましょう。

■筋肉のバランスの悪さを矯正する

準備期と基礎期前期は、筋肉にアンバランスな点がないかを見極め、矯正する時期です。片足レッグ・プレス、ステップ・アップ、ステップ・ダウン、レッグ・エクステンション、レッグ・カールによって、左右の足の筋力に不均衡があるかどうかがわかります。両方の足の筋力が均一になるまで、弱い方の足を10%多く鍛えます。

■できるだけサイクリングに近い動きでエクササイズを行う

ジムでの筋力トレーニングは、できる限り自転車に乗っているときに近い体勢や可動域で行うようにします。

 

サイクリストの筋力トレーニングプログラムの主目的は、より大きな力で、ペダルをより長い時間こげるようにすることです。そのためには、サイクリング特有の筋肉とそれを支える筋肉を活性化させるパターン(筋肉の動員比率と連動性)を高めることが必要です。筋力トレーニングの効果を最大化するには、ジムで向上させた筋力を、直接的にサイクリング特有の筋力として活用できるようにしなくてはいけません。これは、ジムで鍛えた筋力を、自転車での筋力トレーニングによって強化することで実現させます。<了>■