自分の素質がわかる遺伝子テスト

【速くなるためのヒント一覧】2012年6月6日 18:15

持久系(遅筋)の能力は練習で伸ばせるが、瞬発系(速筋)の能力は遺伝的要素が強く素質がなければ大きく向上させるのは難しいといわれている。こういった遺伝的特性がわかれば、練習計画・レース戦略に活かすことができるだろう。従来、このような素質を遺伝子レベルで調べるには海外で高額の費用を払って行う必要があったが、2010年12月より国内でごくかんたんな方法で、5,000~13,500円で行えるようになった。■この記事は、旧サイトからの移行分です(2011.10.06の記事です)■

 

遺伝子タイプのテスト

具体的には、特殊な綿棒で口の中の粘膜を採取することで、筋肉の構造・全身持久力・運動エネルギー効率に関する遺伝子を調べることできる( 検査会社:株式会社スポーツスタイル)。速筋遺伝子の発達に関わるACTN3のテストを行った場合は、自分が以下3つの分類のどれに該当するかがわかるという。

  • RR型:パワー・スプリント系
  • RX型:中間系
  • XX型:持久力系

 

レースへの活用方法

特にクリテリウムや平坦路でのロードレース・トラック競技など速筋の重要度が高いレースに関しては、競技者としての向き不向きを知る上で参考になるだろう。仮にXX型であったとしても、ロングスプリントの能力を徹底的に磨いておけば、こういったレースでも勝てるチャンスを高められる可能性がある。

高い持久的能力が求められるクライマーやTT選手、トライアスリートにとってはスタミナと持久力の潜在能力が調べられるという点がメリットになるだろう。レース戦略に活かすという意味では、仮にRX型であった場合は、ヒルクライムに出場するとしてもある程度スプリント力を磨いておけば、ゴール間近まで勝負がもつれた時に競り勝てる可能性を高められるだろう。逆にXX型であれば「スプリント練習はしない」と割り切って、ひたすらLTを上げることに集中した方が練習効率が高くなり、良い結果につながるかも知れない。

 

注意点

■スポーツへの遺伝子の影響は、まだ研究途上の段階

ただしスポーツへの遺伝子の影響は、まだ研究途上であり議論の余地がある点は注意が必要だろう。
例えば、2009年のオランダとアメリカの成人2,600人を対象にした研究では、運動に関するDNA領域が新たに37も明らかになったとの研究結果があり、実際には何百もの遺伝子が運動のパフォーマンスに影響している可能性がある。また、スポーツに与える遺伝的影響は15%以下との指摘もある。
『BiCYCLE CLUB(2012年1月号)』では、ブリヂストン・アンカーの3選手などの遺伝子テスト結果が紹介されているが、「おおむね一致する選手もいますが(中略)やや予想外の結果があります」という中西安弘氏(ブリヂストンサイクル)のコメントが掲載されている。
その意味では、テスト結果を盲信するのではなく、あくまで「レースで勝つ可能性を高めるための参考情報として活用する」といったスタンスの方が無難だろう。

 

検査会社

 

参考文献

  • 『ランナーズ(2011年2月号)』スポーツ遺伝子テストがグッと身近に!・P52・㈱アールビーズ
  • 「最新科学トレーニング」・『BiCYCLE CLUB(2012年1月号)』・P50~57・枻出版社
  • 中西安弘, 山口博久共著・『科学的ヒルクライムトレーニング』・P82, 83・枻出版社
  • アレックス・ハッチンソン著, 児島修訳・『良いトレーニング、無駄なトレーニング』・P54~58・草思社