脂肪燃焼の「通説」に対する問題提起

【速くなるためのヒント一覧】2012年9月4日 07:00

体脂肪を落とすために効果的な方法としては広く知れ渡った方法にLSDがある。「時間当たりのエネルギー消費量こそ少ないものの、長時間継続できることに加え運動中のエネルギー源全体に占める脂肪の比率が高いので、体脂肪率が効率的に減らせる」というのがその理論だ。これについて『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE』の著者・ジョー・フリール氏が興味深い問題提起を行っているので、紹介する。■この記事は、旧サイトからの移行分です(2012.01.03の記事です)■


脂肪燃焼の「通説」に対する問題提起

ジョー氏が問題意識を持っているのは、本当にLSDのような方法が体脂肪を落とすのに効率的な方法なのか?ということだ。

■「低強度」の運動と「高強度」の運動の皮下脂肪厚への影響

1994年にカナダ・ケベックのラヴェル大学で行われた実験では、興味深い結果が出ている。

この実験ではあるグループに低強度(ゾーン1の低い心拍数)の運動を20週間継続させ、もうひとつのグループには高強度(最大パワーの60~70%で15~90秒のスプリントを実施)を15週間継続させた。この間の消費カロリーは、低強度のグループで28,757kcalと、高強度のグループの13,829kcalを大幅に上回った。しかし皮下脂肪厚を計測したところ、意外なことに、エネルギーの消費量から説明した時、高強度のグループの方が減少幅が大きかった。

■高強度のグループでは脂肪を使用する酵素が顕著に増加

これは練習と練習の間のいわば「休んでいる」間に、高強度のグループは脂肪の代謝が増加した結果と考えられる。事実、高強度のグループは、脂肪をエネルギー源として使用する酵素が顕著に増加しており、逆に低強度のグループではこれらの酵素に変化がなかった。

この実験は、かなりの低強度とかなりの高強度を長期間(15~20週間)も継続した場合を比較したやや極端な比較例なので、サイクリストやロード・レーサーに直接あてはまるかはわからない点は注意が必要だ。

■選手は練習強度を上げて行くことで体脂肪を絞る

しかしジョー氏自身、これまで年末年始で余分な体脂肪を蓄えてしまった選手が、その後、特に極端な練習を行うことなく、少しずつ練習強度を上げて行くことで徐々に体脂肪を絞っていくのがいつものパターンだと述べている。

■短時間・高強度の練習で効率的に体脂肪を減らせる可能性

これらの事実から「LSDは体脂肪を減らすのに有効な方法」との結論自体は覆らないものの、「効率性といった意味では今後定説が覆る可能性がある(つまり脂肪燃焼のためにLSDに取り組まなくても、短時間・高強度の練習でも効率的に落とすことができる可能性がある)」ことが見て取れる。

■消費カロリーよりも摂取カロリーを少なくするのが大原則

ただしいずれのケースでも消費カロリーよりも摂取カロリーを少なくしなければ、体重は減らないので、その大原則だけはよくおぼえておきたい(いくらLSDで大量にカロリーを消費してもそれ以上にカロリーを摂取したら体重は減らない・また高強度練で「休んでいる間」の脂肪の燃焼効率が上がったとしても同じことがいえる)。

 

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