パワー・データで見るツール・ド・フランスの「きつさ」
ツール・ド・フランスはいったいどの程度ハードなのだろうか。今回は『サイクリスト・トレーニング・バイブル』の著者であるジョー・フリール氏のブログを参考に、パワー・データで見るツール・ド・フランスの「きつさ」を紹介する。
アマチュア選手とツール出場選手のCTL
■アマチュア選手のCTLは60~100程度
アマチュア選手のCTLは、レース・シーズンの当初は60~100程度で、シーズン中はだいたいその範囲内で推移することが多い(以下のリンクは、あるアマチュア選手の7か月分のPMCの例)。
■ツール出場選手のCTL
プロ選手の場合は、当然ながらアマチュア選手よりもCTLは高くなり、ツール開幕時点では150程度のことが多い。
これがツール終了時点では、200程度まで上昇する。わずか3週間で33%も上昇する計算になり、かなり大きな上昇幅といえるだろう。
セレンセンのツール2009年のパワー・データ
これほど急激にCTLが上昇する理由は、ひとえに各ステージのTSSがかなり大きいことにある。以下のリンク先のグラフはサクソ・バンクのクリス・アンカー・セレンセンが2009年のツール・ド・フランスに出場した際のものだ。
棒グラフ(目盛は右の縦軸)は各ステージのTSSを、青色の折れ線グラフ(目盛は左の縦軸)はその日の5分のピーク・パワーを、赤色の折れ線グラフ(目盛は左の縦軸)はその日の20分のピーク・パワーを示している。
■TSS 216~405が16日
TSSが216を超えた日は、合計で16日もあり、最も厳しいステージではTSSが約405を記録している。またその翌日と翌々日も走り続けており、いずれもTSSは300近い数字を記録している。
練習やレースが「きついかどうか」の境目はTSSが150程度で、2時間のハードな練習やレースのTSSは160~180程度になることが多い。それと比較すると、ツール中にいかに大きな負荷が体にかかり続けているかが伺われる。
■週間のTSS合計は約1,500
またセレンセンのツール中の週間のTSSの合計は、約1,500にも達しており、第1週では約1,725を記録している。
アマチュア選手がかなりハードに練習した場合の週間TSSの合計値は、700程度のことが多いので、ツール中はその倍を超えた負荷が3週間にも渡ってかかり続けていることになる。
■ブエルタが開幕してもツールの疲労を引きずっているケースも
このようにツールの疲労はとてつもなく大きいことから、ツール終了後、少なくとも2週間はしっかり疲労を抜く必要がある。それでも選手によっては、秋のブエルタが開幕しても、ツールの疲労を引きずっている場合もある。ジロとツール、またはツールとブエルタの2つのグラン・ツールに出場することはかなりきついことであり、オーバートレーニングに陥るリスクがひじょうに高いといえる。
参照URL
- Joe Friel・『How Hard Is the Tour de France?』・http://www.joefrielsblog.com/2012/06/how-hard-is-the-tour-de-france.html
- ウィキペディア・『クリス・アンカー・セレンセン』・リンク