■■インタビュー:Team UKYOのパワートレーニング(3) 土井雪広選手 vol.2 「土井選手のパワー・ウェイト・レシオ(PWR)や世界のトップ・プロのパワー」■■
Team UKYOインタビュー第3弾: 土井雪広選手 vol.2 「土井選手のパワー・ウェイト・レシオ(PWR)や世界のトップ・プロのパワー」
インタビュー日: 2013年4月20日(土) Text & Photo by キルシュベルク・インク
(上)インタビュー中の土井選手。チームTTを走り終えたばかりにも関わらず、幅広い話題について気さくに語ってくれた。
創設2年目となる今シーズン、『パワータップ』をトレーニング機材として導入し、JPTで「台風の目」的存在感を示しているUCIコンチネンタルチーム、Team UKYO。
4月20日のJPT第2戦、南紀白浜チームTT後に、チームのエースであり昨年の全日本チャンピオンである土井雪広選手に、アルゴス・シマノからTeam UKYOへの移籍の舞台裏から現在のパワートレーニング、そしてヨーロッパで成功する秘訣などを伺いました(3部構成のインタビューの第2回目です。第1回目はこちら)。
■スキル・シマノ、アルゴス・シマノ時代のパワーメーター活用度
キルシュ
スキル・シマノ、アルゴス・シマノ時代はトレーニングではどこまでパワーメーターを活用していたのでしょうか?
土井
もう全部ですね。レースでもTTからヒルクライムまで必ずパワーメーターはつけてましたし。心拍数じゃなくて常にパワーなんですよ、もう完全に。
キルシュ
心拍数は見ない?
土井
見ないです。もうテープ貼ってあります(笑)。パワーが普段より出てないのに心拍数がバーンて上がってたらショックやし、逆に足がメッチャ調子いいのに心拍数が低かったら最悪やし。
■ブエルタのチームTTでは、先頭500W、5秒~10秒でやっとスピードを維持できる
(上)チームTTの先頭に立つ土井選手。チームはJPT開幕2連勝と幸先の良いスタートを切った。
土井
今は諸事情でレースではパワータップを使ってないので、今日のチームTTなんかもうサイコンすらつけずに走りました。
キルシュ
ハンドルバーに何もついてなかったので、どうやってペース確認するんだろう?と思ってたんですよ。基本的に体が大きくてパワーのあるホセ選手がペースを作って、それにみんなついて行く。そういうプランなのかなと思ったのですが。
土井
いやもう、「走れるだけ頑張ろう!」みたいなカンジで。
本来、体ちっちゃい僕みたいな選手はトレインの先頭を牽いて10秒ですよ。ブエルタの時なんか5秒とかですから。先頭に出たら500Wで5秒~10秒とかで、それでやっとあのスピードを維持できる。で、牽ける選手、つまり体がデカくて体重があって平地でワット数が出せる選手は1分牽いたりとか。
キルシュ
レースでもパワーが見れると、そういうシステマチックな走りが可能ですね。
土井
そうですね。向こうではグランツールだろうがその他のステージレースだろうが、常に見てましたから。集団走行でも逃げてても。トレーニングだろうがレースだろうが、「もうコレがないとダメ」という感じでした。
■トレーニングメニュー作成やコンディショニングへのパワーメーターの活用
キルシュ
向こうではトレーナーがついていたという話でしたが、その人は何を基準にトレーニングメニューを作って渡してくれるのでしょうか?
土井
僕らが毎日のように送ってた練習データですね。そこからは「この選手は何ワットをどれくらいの時間出せる」とか見えてくるわけじゃないですか。それをもとにチームTTの隊列だったり、誰が何秒牽くとかっていうのを全部、コンピューターとかで組み立てるんです。そういうふうに全部計算されてるんですよね、今の時代って。そういうのができるのがパワーメーターのメリットですね。
キルシュ
そのトレーナーの方はパワーデータをもとに、出場予定レースに向けてコンディションのピークを持っていくためのアドバイスなどもくれるのですか?
土井
もちろんそうです。それもパワートレーニングならではですよね。とにかく、向こうのプロ選手はほぼ全員やってますからね。
■土井選手の20分TTの出力は、380W, 6.4W/kg
(上)ウォームアップ時に土井選手のバイクに取り付けられたジュールGPSコンピューター。
キルシュ
土井さんのFTPはいくらくらいなんですか?
土井
FTPどんぐらいなんだろうなあ…。僕、いつも20分のテストやって…。
キルシュ
…0.95を掛ける?
土井
そう。一番良かった時で380wくらいかな。それでたしか6.2w/kgとか6.3w/kgだったと思います。去年も全日本の前、リエージュ走った頃あたりは良くて、6.4w/kgとかでしたね。
チーム内でもホント、トップ5に入るくらいデータ良かったんで。たとえば4分のメニューをやったら、ほぼ誰にも負けないくらいのワットを出してたし。
■世界のトッププロが出るようなレースで立派に走るために必要なパワー・ウェイト・レシオ
キルシュ
日本人が今後、世界のトッププロが出るようなレースを立派に走ろうと思ったら最低どれくらいのパワー・ウェイト・レシオが必要なんでしょうか?
土井
う~ん…どれくらいですかね。5.8、5.9とかじゃないですかね。クライマーだったら、もう6ぐらいはないとハナシになんないと思いますよ。パンチャー系の選手だったら5.5~5.6とか。結局、スプリンタータイプに近づけば近づくほど低くなってくるんで。逆にクライマーは高くないといけない。ウィギンスなんか7とかですからね(笑)。パリ~ニースの時のTTの値を見たんですけど、彼、20分480wとか出せるんですよ。
キルシュ
はぁ…(絶句)。
土井
(笑)もうバケモン。有り得ないでしょ。「こんな値で走んの??誰も付いていけないや!」って(笑)。僕より100wくらい高いんですよ。
■コンディショニングではトレーナーの役割が重要に
キルシュ
さすがのパワーメーターも、トレーニングやレースのこういった部分まではカバーできない、というのはありますか?
土井
コンディショニングって、今まで一緒にやってきたトレーナーしか分かんないじゃないですか。僕のオランダ人のトレーナーとはずーっとマンツーマンでやってきて、毎日の練習データとレーススケジュールを把握してくれていて、「明日はこれくらいのことをやったほうがいいよ」とか指示してくれる、そういう人が傍らにいるというのはすごく重要ですね。
こっちに帰ってきて、自分がすべての管理をやるしかないんで、そこのところはいろいろ大変です。
■ブエルタ・ア・エスパーニャ、ツール・ド・フランスと土井選手
キルシュ
土井さんがツール・ド・フランスではなくてブエルタ・ア・エスパーニャのほうに2年連続で選抜されたのは、やはりパワーをはじめとしたパフォーマンス特性がブエルタ向きだとチームが判断したからですか?
土井
って言われたんですけど、そんなことないですからね(笑)。「ツールでも全然行けるぞ」、と。
確かにツールは全世界の選手がベストコンディションで臨むから、もちろんブエルタに比べたらレベルが高いとは思うんですよ。
キルシュ
ツールが一番、選手やスタッフのモチベーションも高そうですね。
土井
ツールでステージ優勝したら一生暮らしていける、みたいなもんなんでね。で、僕もツール前のレースで結果出して、すべて上手く行ってたのに…。
キルシュ
ツールに選ばれても大丈夫なように、そこに向けて調整をしていたわけですね。
土井
めっちゃすごいプログラムで走ってましたからね。春にカタルーニャ走って、クラシック3つ走って、全日本に強行で帰ってきて勝って、そのままカリフォルニア飛んでツアー・オブ・カリフォルニア走って、帰ってきてドーフィネ走って…。
で超ピークの状態で、「さあツール!」と思ってたんですけど。スポンサーの方針とかもあって、そうはいかなかったですね(苦笑)。
キルシュ
次またブエルタに向けて仕切り直して、コンディションをそこまで持っていくというのは大変だったと思いますが?
土井
やるしかないんで、やりました(苦笑)。ひとりでアルプス行って高地トレーニングキャンプして。で、その次のブルゴスっていうステージレースで結果出して、ブエルタ出たんですよ。
ホントに…楽しいシーズンでしたよ、あるイミ。充実してたっていうか。■
Team UKYOが使用するサイクルオプス製品(価格はすべて税込)
■ホイール:PowerTap G3搭載アルミホイールセット
最新パワータップモデル、G3が32組のWheelsmith製ダブルバテッドスポークとブラス製ニップルによってHayes製箱型断面リムに組み込まれたトレーニングホイール。トッププロのハードな使用にも耐え抜く高い剛性を誇る。
- 品名:サイクルオプス・アルミホイール with PowerTap G3
- 標準価格:158,000円(リア)/35,000円(フロント)
■心拍/パワー計:パワーキャル
心拍からパワーを算出する世界初の心拍ストラップ。実測式パワーメーターの約1/10の価格ながら、精度の高いデータ収集が可能で、発売から半年で国内累計1,500本を売り上げ、ブログなどでも取り上げられることの多い人気製品。
- 品名:サイクルオプス・パワーキャル
- 標準価格:12,000円
■サイクルコンピューター:ジュールGPS
世界でただひとつ、パワートレーニング用に開発されたサイクルコンピューター、『ジュール』の最上位モデル。豊富なデータ表示やトレーニング補助機能に加え、GPSや気圧高度計、磁気コンパスなど本格仕様の計器を備える。
- 品名:サイクルオプス・Joule GPSサイクリングコンピューター
- 標準価格:30,000円
■商品に関する問い合わせ先:キルシュベルク・インク
- URL:www.kirschberg.jp
- Facebook:www.facebook.com/kirschberg.inc