「急加速、急激なペースアップ」の局面でわかるリミッター ~主観的な分析でのリミッターの見つけ方~【BBC】
■急加速(急激なペースアップ)
平坦なコースで急にペースが上がり、短距離を激しく走らなければならなくなる状況が苦手で、次の激しい走りまでに回復ができない場合、無酸素持久力がリミッターだと考えられます。激しい走行を何度も繰り返し行える能力を高めるには、有酸素持久力を向上させるトレーニングが効果的です。有酸素系のベース体力が高いほど回復も早くなり、代謝副産物の蓄積や糖質の枯渇によって妨げられることなく、力強く走れるようになります。また、ペダルを素早く、効率よくこげる能力も必要です。ペダリング・スキルがここでのリミッターになっている可能性もあります。
ペースアップの時間が非常に短く、その合間の回復時間は長いが、周囲についていくにはかなり高いパワーが必要だとすれば、スプリント・パワーがリミッターだと考えられます。このような状況は、コーナーを抜けて加速する場合によく生じます。この場合、筋力と効率を鍛える必要があります。クリテリウムでこの状況に陥ると感じる選手もいます。彼らは、「クリテリウムで集団の後方についていくので精一杯だ」というのです。この場合、集団についていくスプリント・パワーはあるものの、効率が悪いためにエネルギーを無駄にしている可能性があります。クリテリウムでは、集団の後方に行くほど、ヨーヨーのように引き離されがちです。伸ばしたゴムが、再びもとの形に戻ろうとするように、コーナーを抜ける度に、エネルギーを使って集団に追いつかなければなりません。改善すべきは、コーナリング・スキルと集団走行技術だと考えられます。
※この記事は、『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『BASE BUILDING for CYCLISTS』トーマス・チャップル著・velopress)の立ち読み版です。『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』を下敷きにした、1年のなかでも最も重要でありながら、最も理解されにくい時期でもある「基礎期(ベーストレーニング期)」に、どのようにトレーニングすべきかを詳しく掘り下げた好著です。■
著者紹介
トーマス・チャップル
ウルトラフィット・コーチング・アソシエイト。USAサイクリングおよびUSAトライアスロンで、公認コーチとしてエリートレベルの選手のコーチを行っている。1997年に専業のコーチとなって以来、指導してきた選手は、全米および世界のレースで優秀な成績を収めてきた。チャップルの指導した選手は、ハワイのアイアンマン世界選手権のエイジ別入賞やアマチュア部門での優勝、全米プロ/エリート・クリテリウム選手権の上位入賞、NORBA全米シリーズの年代別部門、24時間単独マウンテンバイク・レースの優勝などの栄光に輝いている。
トレーニングやサイクリング関連の定期刊行物、ウェブサイトに定期的に記事を寄稿。そのコーチングスタイルは、短期・長期の目標への到達を目指すトレーニングプロセスにフォーカスしながら、バランスと一貫性を重視していくというものである。選手時代は、全米レベルのダウンヒルのマウンテンバイク・レースや、地元のロードおよびトラック競技の選手として活躍した。詳細は、ウェブサイト(www.coachthomas.com)を参照。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『サイクリスト・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。