平坦コースは得意だが、山岳コースの上りでは平坦コースでは負けない相手に抜かされてしまう場合のリミッター ~主観的な分析でのリミッターの見つけ方~【BBC】
1時間の平均パワーが250Wだとすれば、平坦コースでは平均パワーが225Wの選手よりも速く走れます。しかし、250Wの選手が、上りでも同じように速く走れるとは限りません。上りでは、パワー・ウェイト・レシオが高いアスリートが有利になるからです。有酸素系のベース体力と筋力に優れ、筋持久力が高いレベルに達している選手でも、パワー・ウェイト・レシオは上りでのリミッターになる可能性があります。たとえばあなたの体重が165ポンド(約75kg)で1時間の平均パワー出力が250Wの場合、パワー・ウェイト・レシオは3.3W/kgです(250W ÷ 75kg = 3.3W/kg)。別の選手のパワー出力が225Wと低くても、体重が143ポンド(約65kg)と軽ければ、パワー・ウェイト・レシオは3.4W/kg(225÷ 65 = 3.4W/kg)となり、3.3W/kg よりも優位だといえます。
体組成がすでに適正である場合は、絶対パワーを上げるための練習が必要です。絶対パワーとは、一定時間内の平均パワーです。相対パワーとは、体重で除した平均パワー、すなわちパワー・ウェイト・レシオのことです。ペダルを踏む力が強くなり、有酸素系のベース体力が高まり、ペダリング・スキルが向上すれば、絶対パワーも上がります。これらの基礎的な体力要素が高まれば、体力の上限が押し上げられ、上りでの走行ペースが速くなり、平坦コースで高い平均パワーを維持できるようになります。
※この記事は、『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『BASE BUILDING for CYCLISTS』トーマス・チャップル著・velopress)の立ち読み版です。『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』を下敷きにした、1年のなかでも最も重要でありながら、最も理解されにくい時期でもある「基礎期(ベーストレーニング期)」に、どのようにトレーニングすべきかを詳しく掘り下げた好著です。■
著者紹介
トーマス・チャップル
ウルトラフィット・コーチング・アソシエイト。USAサイクリングおよびUSAトライアスロンで、公認コーチとしてエリートレベルの選手のコーチを行っている。1997年に専業のコーチとなって以来、指導してきた選手は、全米および世界のレースで優秀な成績を収めてきた。チャップルの指導した選手は、ハワイのアイアンマン世界選手権のエイジ別入賞やアマチュア部門での優勝、全米プロ/エリート・クリテリウム選手権の上位入賞、NORBA全米シリーズの年代別部門、24時間単独マウンテンバイク・レースの優勝などの栄光に輝いている。
トレーニングやサイクリング関連の定期刊行物、ウェブサイトに定期的に記事を寄稿。そのコーチングスタイルは、短期・長期の目標への到達を目指すトレーニングプロセスにフォーカスしながら、バランスと一貫性を重視していくというものである。選手時代は、全米レベルのダウンヒルのマウンテンバイク・レースや、地元のロードおよびトラック競技の選手として活躍した。詳細は、ウェブサイト(www.coachthomas.com)を参照。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『サイクリスト・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。