ポラライズドトレーニングはホビーレーサーにも有効か?
ポラライズドトレーニング、または「80/20トレーニング」は、最近注目されているトレーニング手法である。この方法は、エリート選手だけでなく、ホビーレーサーにも有効なのだろうか?以下では、その効果や適用可能性について紹介する。
■ポラライズドトレーニングとは?
ポラライズドトレーニングは、トレーニング時間の約80%を低強度で、残りの20%を高強度で行う手法である。この概念は、ノルウェーのアグダー大学に所属するスティーブン・セイラー博士の研究に基づいている。彼は、過去の研究を幅広く分析した結果、エリート選手がこの比率でトレーニングしていることを突き止めた。この研究結果はその後、他のスポーツ科学者たちによっても支持されている。
低強度のトレーニング(最大心拍数の70-75%程度)は、心臓や肺、脂肪燃焼機能といったパフォーマンス要因を強化する基礎を築く。一方、高強度のトレーニング(最大心拍数の85%以上)は、乳酸システムやATP-PCシステムを強化し、短時間の全力スプリントなどで必要なエネルギー供給を促進する。
■ホビーレーサーにとっての課題
しかし、ホビーレーサーにとって、ポラライズドトレーニングを実践するのは容易ではない。その主な理由は時間不足だ。限られた時間内で成果を最大化しようと、多くのアスリートは中程度の強度(最大心拍数の80-85%)でトレーニングを行う傾向がある。この中途半端な強度でのトレーニングは、十分な回復を妨げ、真に高強度のトレーニングの効果を引き出すことを阻害する可能性がある。
■ピラミッド型トレーニングとの比較
スペインの研究者たちは、ミドルディスタンストライアスロン(1.9km水泳、90km自転車、21.1kmランニング)に参加するレクリエーショナルアスリートを対象に、ポラライズドトレーニングとピラミッド型トレーニングの効果を比較した。
- ポラライズドグループ:低強度84.4%、中強度4.3%、高強度11.3%
- ピラミッド型グループ:低強度77.9%、中強度18.8%、高強度3.3%
両グループは12週間それぞれのトレーニングを実践し、その後フィットネステストとトライアスロンに挑んだ。その結果、両グループ間での成績差は平均でわずか2秒にとどまった。また、ピラミッド型グループは乳酸閾値における最大走行速度や有酸素ゾーンでのパフォーマンスが向上するという、統計的に有意な改善を示した。
■結論
これらの結果は、ポラライズドトレーニングが必須であるわけではないことが示唆している。ただし、全体のトレーニング時間の70-80%を低強度で行うことは依然として有用であると考えられる。また、閾値付近のトレーニングを排除する必要もないだろう。
現時点では、ホビーレーサーにおけるポラライズドトレーニング導入の有効性については、さらなる研究が必要といえよう。
参考文献
Philip Mosley, "Does Polarized Training Really Work?", TrainingPeaks, August 13, 2020, [https://www.trainingpeaks.com/blog/does-polarized-training-really-work/](https://www.trainingpeaks.com/blog/does-polarized-training-really-work/)
Journal of Sports Science and Medicine (2019) 18, 708-715