人生の下り坂にいるのか? ~年をとれば仕方がないと考えられている変化も、ある程度コントロールできる~

【立ち読み版】【速くなるためのヒント一覧】2024年9月17日 13:32

50を過ぎても速く! 50・60・70代になってもハイパフォーマンスを諦めない

 

■人生の下り坂にいるのか?

読者の皆さんが今、何を思っているのか、私にはわかります。そして私自身も同じ気持ちです。確かに、本章では、いい話はあまり出てきませんでした。しかし残念ながら、加齢のマイナス面はこれだけではなく、ほかにもまだ検討されていない問題があります。加齢とともにパフォーマンスに影響を与えるのは、VO2maxの低下、体脂肪の増加、筋肉の減少だけではありません。シニア・アスリートのパフォーマンスに関しては、このビッグ3が共通したリミッターかもしれませんが、我々の体内ではそれ以外のことも起きています。加齢が及ぼす悪影響に対処するには、それを理解しなくてはなりません。たとえば、骨密度の低下、体内の酸性化、新陳代謝の鈍化、関節可動域の減少などです。このほかシニア・アスリートが直面する変化には、怪我のリスクが上昇する、免疫が低下して病気にかかりやすくなる、といったことも入るかもしれません。この最後の2つの変化が原因でトレーニング負荷を減らすこともありますし、ひいては急激に体力が落ちることになります。そうなると、いったん体調が回復しても十分に取り戻せなくなるかもしれません。

いずれの場合も、パフォーマンスに対する影響の大きさは、生まれと育ちの両方が作用して決まるのです。生まれのほうはコントロールのしようがありません。しかし、第1章から第3章までで何回も言ったとおり、年をとれば仕方がないと考えられている変化も、基本的には、ある程度コントロールできること、つまり、育ちの結果なのです。

自分の未来を自分でコントロールしようと決めたなら、すでにレースパフォーマンス向上への最初の1歩を踏み出したことになります。加齢とは、すなわち生きる姿勢です。自分が人生の下り坂にいるかいないか。どちらと思うにしろ、あなたは正しいのです。

 

50を過ぎても速く! 50・60・70代になってもハイパフォーマンスを諦めない

※この記事は、『50を過ぎても速く!』篠原美穂訳・OVERLANDER株式会社(原題:『FAST AFTER 50』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版です。『50を過ぎても速く!』は、アメリカを代表する持久系スポーツコーチであるジョー・フリールが、サイクリスト、ランナー、トライアスリート、水泳選手、スキー選手、ボート選手など、すべての持久系競技のアスリートのために、最新の研究をベースにして、「50歳を過ぎてもレースで力強く走り、健康を維持する方法」をわかりやすく解説した好著です。

※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。

 

■著者:ジョー・フリール(Joe Friel)

ジョー・フリールは、TrainingPeaks.comおよび TrainingBible Coachingの共同創立者です。運動科学の修士号を持つフリールは、1980年から持久系アスリートの指導にあたってきました。彼の教えを受けたのは、自転車、マウンテンバイク、トライアスロン、ランニング、ボート、馬術の選手などであり、年齢もさまざま、初心者からエリートまでとレベルも幅広く、アマチュアもプロもいます。なかにはアイアンマン・レースの優勝者、米国内外のチャンピオン、世界選手権代表、そしてオリンピック代表もいます。

フリールの作品は以下のとおりです。『サイクリスト・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)、『トライアスリート・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)、『The Mountain Biker's Training Bible』、『Cycling Past 50』、『Going Long』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Your First Triathlon』、『Your Best Triathlon』、『The Power Meter Handbook』、『Precision Heart Rate Training』(寄稿)、『Total Heart Rate Training』『Triathlon Science』(共同編集)。フリールはまた、米国トライアスロン指導者委員会の設立に携わり、会長を2期にわたってつとめました。

そのほか、『Inside Triathlon』、『Velo News』をはじめとする、200を超える雑誌のコラムを執筆するかたわら、米国以外の雑誌やウェブサイトにも頻繁に記事を寄稿しています。持久系競技のトレーニングに関して、さまざまなメディアから意見を求められており、紹介記事が掲載された雑誌は、『Runner's World』、『Outside』、『Triathlete』、『Women's Sports & Fitness』、『Men's Fitness』、『Men's Health』、『American Health』、『Masters Sports』、『Walking』、『Bicycling』といった専門誌から、『The New York Times』、『Vogue』にまで及びます。

フリールはこれまでに、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、太平洋地域でキャンプを主催し、アスリートはもとよりコーチにも、トレーニング、レースについて指導を行っています。また、フィットネス産業や政府機関のアドバイザーとしても活躍しています。

エイジグルーパーとしては、コロラド州マスターズ選手権優勝、ロッキーマウンンテン地区、サウスウェスト地区のデュアスロンエイジ別優勝などの戦績を誇り、全米代表チーム入り、世界選手権出場の経験もあります。現在は、サイクリストとして米国の自転車レースシリーズやタイムトライアルにも参加しています。

 

■訳者:篠原美穂

慶應義塾大学文学部(英米文学専攻)卒業。主な訳書に『アドバンスト・マラソントレーニング』、『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』、『はじめてのウルトラ&トレイルランニング』、『ランニング解剖学第2版』(以上、ベースボール・マガジン社)、『トライアスリート・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)などがある。