対戦相手に目配りする ~自分にとって重要な状況はなにがしかの方法でチェックすべき~
■対戦相手に目配りする
友だちとふたり、コロラド州ボールダーの北でトレーニングしたときのことを紹介しましょう。アップダウンの田舎道を一定ペースで走っていると、自転車が1台、1km近く先を走っていることに気づきました。そのままのペースで走ったので、自転車はだんだん近づいてきます。ですが、500mくらいで差が詰まらなくなりました。あれっと思ってペースアップ。少し走ってさらにペースアップ。
ところが、それでも差が詰まらないのです。さすがに、なんだよこれという感じになりました。幸か不幸か、相手はロードバイクじゃありません。パニアやフェンダーがついた自転車に乗っているのです。本気モードに入った我々はトレインを組み、前の自転車を追いました。そして、追いついたとき、彼がどうやって我々との距離を保っていたのかがわかりました。彼の自転車にはミラーがついていたのです。それで後ろとの距離を測り、我々と一緒にペースアップができたわけです。
競争相手を観察する方法はバイクやヘルメットのミラーだけじゃありませんし、それが一番いいわけでもありません。ともかく、自分にとって重要な状況はなにがしかの方法でチェックすべきです。スプリントやアタックをする前には近くにいる選手をチェックすべきですし、自分が乗っている逃げ集団に対する追走集団の動きもチェックすべきです。
※この記事は、『自転車レースの駆け引き』井口耕二訳・OVERLANDER株式会社(原題:『RACING TACTICS FOR CYCLISTS』トーマス・プレン、チャールス・ペルキー著・velopress)の立ち読み版です。『自転車レースの駆け引き』は、ロードレースやクリテリムで上手に走り賢く戦うための戦術・テクニック・スキルを、豊富なイラストを用いてわかりやすく解説した好著です。
※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。
■著者:トーマス・プレン
1970年代初頭から長年自転車競技にかかわる。アマチュアとして、また、プロとして長いキャリアを誇り、1986年にはUSPRO選手権で優勝。また、レッドジンジャー/クアーズクラシックの13回すべてを完走した数少ないサイクリストとしても知られている。全米選手権で常に上位に入る実力の持ち主で、1982年全米タイムトライアル選手権優勝チームのメンバーでもある。現在、コロラド州ボールダー在住。キャットアイ・サービス&リサーチセンターで所長を務めるとともに、みずから立ち上げた消費者調査とコンサルティングの会社ボールダースポーツリサーチの社長を務めている。自転車製品供給者協会の副会長でもある。常勤の職をふたつ兼務し、家族もいるが、ふつうの人がガレージセールに行くような熱心さで、いまも週末にはレースに参戦している。
■訳者:訳者:井口 耕二
翻訳者。1959年生。東京大学工学部化学工学科卒、オハイオ州立大学大学院修士課程修了。53歳でロードバイクに乗り始め、ニセコクラシック年代別3位、UCIグランフォンド世界選手権出場など、ロードレースを中心に活動している。訳書に『スティーブ・ジョブズ I・II』(講談社)、『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス永遠(とこしえ)のヒーロー』(アメリカン・ブック&シネマ)などがある。