ローテーション ~自転車レースでいい成績を収めたければローテーションが基本になる~

【レース対策情報・レース戦術】【立ち読み版】【速くなるためのヒント一覧】2024年12月9日 07:46

自転車レースの駆け引き(RTC)表紙

 

■ローテーション

本書から学ぶことをひとつだけにしろと言われたら、この章でしょう。自転車競技に必要なテクニックはいろいろとありますが、すべての基本となるのが、このローテーションです。たとえばライターとして成功したければ、どこかの時点で文字を習う必要があります。それと同じです。自転車レースでいい成績を収めたければ、くり返しになりますが、ローテーションが基本になるのです。

ローテーションは裏も表も知り尽くす必要がありますし、うまくできない人が入っていてもスムーズに回す方法も知っておかなければなりません。ローテーションがすぐきれいに回りはじめるか否かで、逃げが成功するかつかまるかも決まりがちです。集団の前方に逃げ集団ができかけているときが、一番つかまりやすいのです。いろいろなやり方を学び、チームメイトやトレーニング仲間と練習しましょう。いい練習にもなるしいいトレーニングにもなります。

ローテーションには、大きく分けて1列ローテーションと2列ローテーションがあります。1列ローテーションでは、先頭に出たライダーはそのまましばらく前を引きます(時間は数秒から数分とまちまち)。2列ローテーションでは先頭に出ても動きが止まりません。全員がぐるぐると連続的に回るのです。各ライダーは、先頭に出た瞬間、横にずれ、下がりはじめます。

一番よく見るのは、基本形の1列ローテーションです。1列棒状になってローテーションするもので、レースやチームタイムトライアルによく登場します。先頭に出たライダーがそのまましばらく引いてから横にずれます。なんだ簡単じゃないかと思うかもしれませんが、ローテーションの効率を高める細かなテクニックがいろいろと存在するのです。

まず、レースで1列ローテーションがどう働くのかを見てみましょう(図2.1)。状況がチームタイムトライアルであっても逃げであっても本質的には同じです。集団との距離を取ろうとしているのか、前にいる別の集団を追っているのかなどの違いはあっても、全員が協力して限界に近い走りをしています。いずれにせよ、ここで問題になるのは効率です。

 

図2.1. 1列ローテーションの基本形

図2.1. 1列ローテーションの基本形

 

まず、ローテーションしているトレイン全体のスピードが一定でなければなりません。前走者の後ろに入ると、前に引っぱられるような力が働きます。このドラフトを利用するため縦1列に並んで走るわけですが、この全体が一定ペースで進むようにしなければならないのです。もうちょっと細かいことを言うと、ここで大切なのはスピードよりきつさです。ただ、きつさは人によって感じ方が違うのでスピードを目安にします。

平坦を時速46kmできれいにローテーションしながら走っていて、上り坂にさしかかったとしましょう。そのとき、先頭がスピードを維持しようとしたら――先頭が爆死するかトレインが崩壊するかしてしまいます。そういう話です。

 

自転車レースの駆け引き(RTC)表紙

※この記事は、『自転車レースの駆け引き』井口耕二訳・OVERLANDER株式会社(原題:『RACING TACTICS FOR CYCLISTS』トーマス・プレン、チャールス・ペルキー著・velopress)の立ち読み版です。『自転車レースの駆け引き』は、ロードレースやクリテリムで上手に走り賢く戦うための戦術・テクニック・スキルを、豊富なイラストを用いてわかりやすく解説した好著です。

※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。

 

■著者:トーマス・プレン

1970年代初頭から長年自転車競技にかかわる。アマチュアとして、また、プロとして長いキャリアを誇り、1986年にはUSPRO選手権で優勝。また、レッドジンジャー/クアーズクラシックの13回すべてを完走した数少ないサイクリストとしても知られている。全米選手権で常に上位に入る実力の持ち主で、1982年全米タイムトライアル選手権優勝チームのメンバーでもある。現在、コロラド州ボールダー在住。キャットアイ・サービス&リサーチセンターで所長を務めるとともに、みずから立ち上げた消費者調査とコンサルティングの会社ボールダースポーツリサーチの社長を務めている。自転車製品供給者協会の副会長でもある。常勤の職をふたつ兼務し、家族もいるが、ふつうの人がガレージセールに行くような熱心さで、いまも週末にはレースに参戦している。

 

■訳者:訳者:井口 耕二

翻訳者。1959年生。東京大学工学部化学工学科卒、オハイオ州立大学大学院修士課程修了。53歳でロードバイクに乗り始め、ニセコクラシック年代別3位、UCIグランフォンド世界選手権出場など、ロードレースを中心に活動している。訳書に『スティーブ・ジョブズ I・II』(講談社)、『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス永遠(とこしえ)のヒーロー』(アメリカン・ブック&シネマ)などがある。