朝食にカロリーを多めに配分する食事スタイルがもたらす食欲抑制効果
本記事では、「食事のタイミングとカロリー配分」に関する研究を紹介する。今回紹介する研究(Ruddick-Collinsら, 2022)では、「朝にカロリーを多めに摂る(Morning loaded)」食事スタイルが、エネルギー消費量には大きな変化をもたらさない一方で、食欲を抑制する効果があることが示された。これは、体重管理が必要なロードレーサーのダイエット戦略に役立つ可能性がある。
■結論
朝食にカロリーを多めに配分する「Morning loaded」食事スタイルは、一日の総エネルギー消費量や基礎代謝量には大きな影響を与えないが、食欲や空腹感を低減させる効果が期待できる。これにより、食事制限の「続けやすさ」が高まる可能性がある。体重管理が必要なホビーレーサーにとっては、トレーニングの継続やパフォーマンスの維持・向上にもつながると考えられる。
■研究概要
研究のデザイン
ランダム化クロスオーバー試験として、肥満もしくは過体重の成人30名を対象に、朝食に多くのカロリーを摂る食事プラン(朝45%・昼35%・夕20%)と、夕食に多くのカロリーを摂る食事プラン(朝20%・昼35%・夕45%)の2つを各4週間ずつ実施した。
主な測定項目
- 総エネルギー消費量
- 安静時代謝量(Resting Metabolic Rate, RMR)
- 体重変化
- 主観的な空腹感や食欲の評価
結果
- どの時間帯にカロリーを多く摂取しても、1日の総エネルギー消費量や安静時代謝量に大きな差はなかった。
- 朝食を多く摂るグループでは、空腹感や食欲が有意に低下した。
- 体重減少幅そのものに大きな差は見られなかったが、「空腹感の低減」によって食事制限を続けやすい可能性が示唆された。
■朝食主導型(Morning loaded)食事スタイルのメリット
飢餓感の軽減
朝にしっかりとカロリーを摂取することで、昼以降の空腹を抑えられるため、過度な間食や夕食時のドカ食いを防ぎやすい。
パフォーマンスへの好影響
運動前後のエネルギー不足を回避しやすくなるため、トレーニングへの集中力・パフォーマンスを高められる可能性がある。
朝に主となるカロリーを摂取する「Morning loaded」食事スタイルは、一日のエネルギー消費を大きく左右するわけではないが、空腹感の抑制につながりうることが示唆された。何より重要なのは、無理な制限ではなくバランスの良い栄養摂取とトレーニングを継続することだが、食事のタイミングと配分を見直すことで、パフォーマンス面でより良い結果につなげられる可能性があると考えられる。
参考文献
1. Ruddick-Collins LC, Morgan PJ, Fyfe CL, et al. Timing of daily calorie loading affects appetite and hunger responses without changes in energy metabolism in healthy subjects with obesity. *Cell Metab.* 2022; 34(10): 1486-1498. doi: 10.1016/j.cmet.2022.08.001
2. Westerterp KR, Johnstone AM, Johnston JD, et al. 同上研究に関連するエネルギー代謝評価の文献