ローテーションの戦術
■ローテーションの戦術
まさかと思うかもしれませんが、ローテーションにも戦術があります。ここまでスムーズにローテーションを回す方法を見てきたわけですが、ほとんどの場合はそれで十分です。ですが、たとえば、チームの違う3~4人と逃げている場合はどうでしょう。第3章では、ほかの選手と協力して逃げを成功させる方法や、ほかの選手をうまく利用する方法なども解説します。ペースを落としたいときもあるでしょう。自分がアタックしたいので、ほかのライダーの足を削りたいときもあるでしょう。それぞれの場合に応じたローテーション戦術があります。
ペースを落とすのは、わりと簡単です(ブロッキングに関する第4章も参照のこと)。前との車間を開ける、ゆっくりと前に出るなど、スムーズな動きを妨害すればいいのです。たとえば、強い選手がひとりいてすごく強く引くので、ローテーションについていくのがしんどかったとしましょう。その場合は、影響をなるべく受けない場所に移動するのが一番です。最悪なのは、その選手のすぐ前とすぐ後ろ(図2.4)。強い選手の直前に引くと、トレインに戻るとき大変な思いをすることになります。強い選手の直後についていると、先頭になった瞬間、強烈な風をうけることになります。強い選手の前後以外の位置に移動しましょう。
図2.4. このトレインで一番強いのがA選手だとすると、黒いジャージの選手は水玉模様ジャージの選手よりがんばらないといけない。
前にも書きましたが、ローテーションでは、スピードそのものはあまり問題になりません。問題になるのはきつさです。ローテーションがスムーズに回っているとき、選手のがんばり具合はそれぞれ異なっているはずです。
よくある失敗は、上りにさしかかったとき、スピードを気にせず突っこむことです。上りに入って限界に達しようとしているのにローテーションをパスしない選手がよくいます。平坦なら快適だけれど上りにはきつすぎるペースなのに。そういうときはローテーションを1~2回パスすればいいのにそのままがんばり、先頭で風を受けて爆死。そうなると、トレインに戻れず切れてしまいます。どのくらいがんばらなければならないかを予測しながら走りましょう。疲れている、あるいは、補給を取りたいなどの場合は、ローテーションを何回かパスしましょう(図2.5)。
図2.5. 最後尾にいるとき、前からだれか下がってきたら矢印Aのようにちょっとずれることで自分の前に入れと下がってきた選手に伝え、最終的にはBの位置に戻るようにすると、ローテーション中に少し休むことができる。
よくある失敗は、上りにさしかかったとき、スピードを気にせず突っこむことです。上りに入って限界に達しようとしているのにローテーションをパスしない選手がよくいます。平坦なら快適だけれど上りにはきつすぎるペースなのに。そういうときはローテーションを1~2回パスすればいいのにそのままがんばり、先頭で風を受けて爆死。そうなると、トレインに戻れず切れてしまいます。どのくらいがんばらなければならないかを予測しながら走りましょう。疲れている、あるいは、補給を取りたいなどの場合は、ローテーションを何回かパスしましょう(図2.5)。
※この記事は、『自転車レースの駆け引き』井口耕二訳・OVERLANDER株式会社(原題:『RACING TACTICS FOR CYCLISTS』トーマス・プレン、チャールス・ペルキー著・velopress)の立ち読み版です。『自転車レースの駆け引き』は、ロードレースやクリテリムで上手に走り賢く戦うための戦術・テクニック・スキルを、豊富なイラストを用いてわかりやすく解説した好著です。
※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。
■著者:トーマス・プレン
1970年代初頭から長年自転車競技にかかわる。アマチュアとして、また、プロとして長いキャリアを誇り、1986年にはUSPRO選手権で優勝。また、レッドジンジャー/クアーズクラシックの13回すべてを完走した数少ないサイクリストとしても知られている。全米選手権で常に上位に入る実力の持ち主で、1982年全米タイムトライアル選手権優勝チームのメンバーでもある。現在、コロラド州ボールダー在住。キャットアイ・サービス&リサーチセンターで所長を務めるとともに、みずから立ち上げた消費者調査とコンサルティングの会社ボールダースポーツリサーチの社長を務めている。自転車製品供給者協会の副会長でもある。常勤の職をふたつ兼務し、家族もいるが、ふつうの人がガレージセールに行くような熱心さで、いまも週末にはレースに参戦している。
■訳者:訳者:井口 耕二
翻訳者。1959年生。東京大学工学部化学工学科卒、オハイオ州立大学大学院修士課程修了。53歳でロードバイクに乗り始め、ニセコクラシック年代別3位、UCIグランフォンド世界選手権出場など、ロードレースを中心に活動している。訳書に『スティーブ・ジョブズ I・II』(講談社)、『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス永遠(とこしえ)のヒーロー』(アメリカン・ブック&シネマ)などがある。