サドル高とパワーの関係とサドル高の調整方法

【ペダリング・ポジション・スキル】【速くなるためのヒント一覧】2025年1月8日 07:49

サドル高は、快適な走行や効率的なパワー出力を実現する上で極めて重要な要素である。適切なサドル高を見極めることで、パフォーマンスの向上だけでなく、膝や腰への負担も軽減できる。本記事では、サドル高とパワーの関係や、サドル高の調整方法について紹介する。

 

■パワーとサドル高の関係

サドル高を上げるにつれて、パワーはある一定のポイントまで向上する。しかし、そのポイントを超えると逆にパワーが低下する。この限界点の直前が、最適なパワーを引き出せるサドル高さとされる。ただし、この高さが快適性においても最適であるとは限らない。

サドル高さの調整方法には以下のようなものがある。

 

■ヒール・トゥ・ペダル法

初心者でも簡単にサドル高を設定できる方法として、ヒール・トゥ・ペダル法がある。具体的な手順は以下の通り。

 

  1. 自転車に乗り、ローラー台や壁を利用してバランスを取る。
  2. ペダルの中心にかかとを乗せ、後ろ向きにペダリングを行う。
  3. ペダルが最下点(BDC: Bottom Dead Center)に達したときに、膝が完全に伸びている状態が理想である。

 

注意点: この方法では、シューズの厚み、クリートの位置、サドルの後退位置、ペダリングスタイルなどを考慮しないため、目安として利用するのがよい。

 

■Greg LeMondの方法

以下の手順で股下の長さを基に計算する方法である。

 

  1. 壁に背を向けて立ち、サドルの圧力を再現するように平らな物を股に押し付ける。
  2. 床から股までの距離をセンチメートル単位で測定する。
  3. 測定値に0.883を掛けた値が推奨されるサドル高である。

 

注意点: この方法は、柔軟性や体型の個人差を考慮しない。

 

■角度計測(ゴニオメトリー)

ゴニオメーターを使用して膝の角度を測定する方法もある。

 

  1. 以下のポイントをつないでできる膝角度を計測する。
    • 大転子(股関節の外側)
    • 膝の中心
    • 外くるぶし
  2. 膝角度が25~35度になるように調整する。

 

注意点:静的な計測であるため、動的な足の動きやライディングポジションを反映していない。

 

■動的な調整方法

最も効果的な方法は、Retulなどの動的な計測システムを使用することである。熟練したバイクフィッターが、膝や足首の角度をリアルタイムで測定し、身体的な制限を考慮して調整を行う。

 

■その他の注意点

・サドルの前後位置(セットバック)の調整

サドル高を設定した後は、サドルの前後位置も調整する必要がある。

 

  • 後ろすぎる場合:パワー出力が低下する可能性がある。
  • 前すぎる場合:膝への負担が増え、痛みを引き起こすリスクがある。

 

・ペダリングスタイルの影響

ペダリングスタイルによっても適切なサドル高は異なる。

 

  • つま先が下向きのペダリング:サドル高を高めに設定する傾向がある。
  • かかとを下げたペダリング:サドル高を低めに設定する傾向がある。

 

サドル高さの調整は、快適な走行や効率的なパワー出力を実現(場合によっては両立)するための重要な要素である。ヒール・トゥ・ペダル法やLeMondの方法を目安にしつつ、動的な計測や専門的なフィッティングを活用することで、最適なサドル高を見極めることができるだろう。

 

参考文献

BIKE FIT, Phil Burt, Boombury Publishing Plc

BIKE FIT Phil Burt Boombury Publishing Plc 表紙