持久系スポーツにおける炭水化物および脂質の摂取を最適化する方法
持久系スポーツ、特にサイクルロードレースでは、トレーニングや競技準備の段階でエネルギー供給量を最適化することが重要である。本記事では、「持久系スポーツにおけるトレーニング・競技準備のための燃料供給量を操作するための食事・運動戦略の共通理解に向けて」(Burke et al., 2018)の研究結果を基に、持久系スポーツにおける炭水化物および脂質の摂取を最適化するための方法について紹介する。
■重要ポイント
同研究における重要ポイントは以下の通り。
- トレーニング負荷や目標に応じて炭水化物の供給量を柔軟に調整する。
- 脂質代謝の適応を促す低炭水化物戦略を、適切なタイミングで取り入れる。
- 高強度セッションでは、炭水化物の供給を十分に確保し、高パフォーマンスを下支えする。
■炭水化物の役割と戦略
炭水化物は筋肉と中枢神経系にとって主要なエネルギー源であり、トレーニングや競技中のパフォーマンスを左右する。
高炭水化物利用戦略 (Train High)
- 筋グリコーゲンを十分に蓄えた状態でトレーニングを行い、高強度セッションや競技での最大パフォーマンスを実現する。
- 練習前後に適切な量の炭水化物を摂取し、1日当たり5-12g/kg体重を目安とする。
低炭水化物戦略 (Train Low)
- 筋グリコーゲンが枯渇した状態でのトレーニングを行い、脂質代謝の適応を促進する。
- トレーニング後の炭水化物摂取を控える、または朝食を摂らずにトレーニングを行う方法がある。
- この戦略は頻繁に使用せず、特定のセッションに限定する。
■脂質代謝の適応戦略
低炭水化物高脂肪食(LCHF)やケトジェニック食事法は、脂質代謝を強化する可能性がある。
非ケトジェニック低炭水化物高脂肪食 (NK-LCHF)
- 炭水化物摂取を日々のエネルギーの20%以下に制限し、脂質代謝を活性化させる。
- 適応期間として5日以上が必要。
ケトジェニック食事法 (K-LCHF)
- 炭水化物摂取を1日50g以下に抑え、ケトーシス状態を維持する。
- 高脂肪酸化を促進する一方で、高強度運動ではエネルギー効率が低下する可能性がある。
■注意点
初心者・中級者
- 初心者の段階では高炭水化物戦略を優先し、安定した燃料供給を実現することが重要である。
- 低炭水化物戦略を試す際は、トレーニング負荷を軽減し、体調を慎重に観察することが望ましい。
上級者:
- 高負荷トレーニングに対応するため、炭水化物と脂質の戦略をピリオダイゼーションに基づいて計画的に組み合わせる。
- 競技によっては、長期的な低炭水化物戦略が適さない場合がある。
健康への影響:
- 極端な栄養制限は、免疫機能や回復能力に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 個人の体質・体調や競技歴に応じた戦略設計が求められる。
参考文献
Burke, L. M., Hawley, J. A., Jeukendrup, A., Morton, J. P., Stellingwerff, T., & Maughan, R. J. (2018). Toward a Common Understanding of Diet-Exercise Strategies to Manipulate Fuel Availability for Training and Competition Preparation in Endurance Sport. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 28(5), 451-463.