高強度インターバルトレーニング(HIIT)と中程度強度連続トレーニング(MICT)のどちらがVO2max向上に効果があるのか?
サイクルロードレースにおいて、持久力やスプリント力を向上させるためには、適切なトレーニング戦略を設計することが不可欠である。本記事では、「高強度インターバルトレーニング(HIIT)および中程度強度連続トレーニング(MICT)のVO2peakトレーニング効果比較」(Frontiers in Physiology, 2019)の知見をもとに、トレーニングの設計方法や効果を最大化するためのアプローチについて紹介する。
HIITは、特に高ボリュームで実施する場合、VO2max(最大酸素摂取量)の向上において優位性がある。これにより、持久力や心肺機能の改善が期待できる。ただし、個人の初期フィットネスレベルやトレーニング歴を考慮し、計画を調整することが重要である。
■VO2maxの向上におけるHIITの効果
高ボリュームHIITの優位性
- 15分以上の高強度運動を含むHIITは、VO2maxを大幅に向上させる。
- 平均で0.29L/分の増加が見られ、これはMICT(0.20L/分)や低ボリュームHIIT(0.18L/分)を上回る。
低ボリュームHIITおよびMICTの効果
- 低ボリュームHIIT/SIT(スプリントインターバルトレーニング)は短時間で実施可能だが、VO2maxの向上幅は限定的である。
- MICTは初期フィットネスレベルの低い人にとって持続的で安定した改善が期待できる。
■トレーニング適応性と個人差
初期フィットネスレベルの影響
- 初心者や中級者はトレーニング刺激に対して応答性が高く、短期間で成果を得やすい。
- 上級者では効果が出にくいため、より高い強度や戦略的なトレーニングプログラムが必要になる。
性別および年齢の影響
- 男性はVO2maxの増加の絶対値が高いが、女性は相対的な増加率が高い場合がある。
- 高齢者でも適切な負荷を設定することでVO2maxの改善が見込める。
■注意点
初心者
- 高強度トレーニングを急に始めると怪我や過度な疲労のリスクがある。
- 練習開始後、少なくとも4週間は低~中強度トレーニングで基礎を固めることが望ましい。
中級者
- 強度とボリュームのバランスが重要となる。
- 高強度と中強度を組み合わせて取り組む。
上級者
- トレーニング効果が頭打ちになる場合は、ピリオダイゼーションや新しい刺激(例:筋力トレーニングやクロストレーニング等)を導入する。
参考文献
Williams CJ, Gurd BJ, Bonafiglia JT, et al. (2019). A Multi-Center Comparison of VO2max Trainability Between Interval Training and Moderate Intensity Continuous Training. Frontiers in Physiology, 10:19. doi:10.3389/fphys.2019.00019