バイクフィットの重要な原則
ロードサイクリストにとって、適切なバイクフィットは快適さとパフォーマンスを向上させる重要な要素である。本記事では、『Andy Pruitt's Complete Medical Guide for Cyclists』を参考にバイクフィットの重要な原則について紹介する。
■バイクフィットとは「人間と機械の結婚」
適切なバイクフィットは、ライダーとバイクの完璧な調和を追求する行為といえる。結婚生活におけるパートナーとの関係のように、ライダーとバイクもお互いにフィットするように調整する必要がある。例えば、サドルの高さやステムの長さなどは、ライダーの解剖学的特徴に合わせて調整できる。一方で、体そのものの調整はストレッチやライドの繰り返しを通じて少しずつ適応させていくことができる。
■自分の体型に合ったバイクを選ぶ
他人のポジションを模倣するのは危険な場合がある。プロ選手はしなやかで細身の体型であり、彼らのポジションは一般的なホビーレーサーには適さないことが多い。プロ選手は競技に体が適応しており、長時間のレースでも快適に走行できる柔軟性を備えている。一方で、一般ライダーは自分の体型や柔軟性に合わせたポジションを見つけることが重要となる。
■静的フィットよりも動的フィット
静的なフィット方法(例えばサドル高を恥骨から床までの距離で計算する方法)は出発点として重要であるが、実際のライディング時の動きに対応するには不十分なことが多い。ライディング中の体の動きを考慮に入れた動的フィットの方が最適なポジションを得られやすい。例えば、ペダルを漕ぐ際には、体がサドルからわずかに浮き上がるため、静止状態で測定したサドル高とは異なる結果となる。
動的フィットでは、反射マーカーを用いてライダーの膝、足首、腰などの動きを3Dで記録し、正確なデータを基に調整を行う。この方法により、サドル高やハンドルバーへのリーチを精密に設定できる。
■サイクリングは「繰り返しのスポーツ」
サイクリングは持久系スポーツであり、同じペダリング動作を何万回も繰り返す。そのため、サドルの高さやクリートの位置が数ミリずれるだけでも、長時間のライドでは膝や腰に大きな負担を与える可能性がある。適切なバイクフィットにより、これらの負担を軽減し、効率的なペダリングを実現することができる。
■フィットウィンドウを覚えておく
適切なバイクフィットには個人差があり、完璧なフィットというものは存在しない。理想的なフィットは「フィットウィンドウ」として数センチの範囲内に収まるものであり、ライダー自身がライドを重ねる中で微調整を行いながら見つけていくものである。
例えば、ロードバイクのサドル高を基準にオフロード用に調整する場合、1~2cmの差異を考慮することで快適さと効率性を両立できる。
バイクフィットはライダーの快適性とパフォーマンスを大きく左右する重要な要素であるが、自分自身では困難な場合も多い。そういった場合は、バイクフィットの専門家のアドバイスを受けることも一案だろう。
参考文献
Complete Medical Guide for Cyclists*, Andrew L. Pruitt, Ed.D., with Fred Matheny, VeloPress, 2006