高強度インターバルトレーニング(HIIT)と長時間の低強度トレーニングがランニングパフォーマンスや乳酸閾値(LT)へ及ぼす効果についての研究
高強度インターバルトレーニング(HIIT)は持久的パフォーマンス向上に高い効果を示すことが知られている。今回は、ランナーを対象にした研究である「Manipulating high-intensity interval training: Effects on VO2max, the lactate threshold and 3000 m running performance in moderately trained males.」を参考に、HIITの異なるプロトコルと長時間の低強度トレーニングがランニングパフォーマンスや乳酸閾値(LT)へ及ぼす効果について紹介する。
■被験者
- 対象:19歳前後の中程度にトレーニングを積んだ男性ランナー17名
- 特徴
- 平均週走行距離:約24マイル(約39km)
- 過去にHIIT経験なし
■事前・事後テスト
- 最大酸素摂取量(VO2max)、VO2max到達に必要な最小速度(VVO2max)、乳酸閾値速度(Vlt)
- VO2max速度での疲労までの時間(Tmax)
- 3000mタイムトライアル
■トレーニングプロトコル
10週間のトレーニングを以下の3グループで実施した。
G1(VVO2max 100%グループ)
- 内容:週4回
- 週2回のインターバル(VVO2maxの100%で60%Tmaxの持続時間、5-8本、1:1の休息)
- 週2回の回復ラン(60分、~8:25/mile・~約5:14/kmペース)
- 例:3.5分間(~6:00/mile・~約3:44/kmペース)ラン→3.5分間(~12:30/mile・~約7:46/kmペース)休息
G2(VVO2max 130%グループ)
- 内容:週4回
- 週2回のインターバル(VVO2maxの130%で30秒、7-12本、1:9の休息)
- 週2回の回復ラン(60分、~8:25/mile・~約5:14/kmペース)
- 例:30秒(~4:50/mile・~約3:00/kmペース)ラン→4.5分間(~12:30/mile・~約7:46/kmペース)休息
Gcon(コントロールグループ)**
- 内容:週4回、60分の回復ラン(~8:25/mile・~約5:14/kmペース)
■共通点
- 全グループの週トレーニング時間:約4時間
- 週走行距離:23~28マイル(約37~45km)
■結果
VO2max
- G1:+9.1%(G2より30%改善)
- G2:+6.2%
- Gcon:+2.1%(改善なし)
VVO2max
- G1:+6.4%
- G2:+7.8%
- Gcon:+1.3%(改善なし)
LT速度(Vlt)
- G1:+11.7%(統計的に有意)
- G2:+4.7%
- Gcon:+1.9%
Tmax
- G1:+35%
- G2:+32%
- Gcon:+3.5%(改善なし)
3000mタイムトライアル
- G1:-50秒(-7.3%、統計的に有意)
- G2:-23秒(-3.4%)
- Gcon:-1秒(-0.1%、改善なし)
本研究の結果から、高強度インターバルトレーニングは、低強度トレーニングと比較してランニングパフォーマンス全般の改善に効果的といえる。乳酸閾値(LT)の改善においては、絶対的な強度よりも高強度の「持続時間」の影響が大きい可能性がある。また、G1のようなVVO2max 100%で長めの持続時間のプロトコルは、LTを含む耐久性能の向上に有効と考えられる。
参考文献
Esfarjani, F., & Laursen, P. B. (2007). Manipulating high-intensity interval training: Effects on VO2max, the lactate threshold and 3000 m running performance in moderately trained males. Journal of Science and Medicine in Sport, 10(1), 2735. https://doi.org/10.1016/j.jsams.2006.05.014