ロードレースにおいてスプリンターとして成功するために必要な条件は?
パワーデータ分析によって、ロードスプリンターとして成功するために必要な条件が徐々に明らかになりつつある。Van Erpら(2020)の研究では、2012年から2019年の間に収集されたプロ選手のパワーデータを基に、1シーズンあたり400ポイント以上のProCyclingStats(PCS)ポイントを獲得したスプリンターを“CAT.1(成功)”、400ポイント未満のスプリンターを“CAT.2(やや成功度が低い)”と分類した。そのうえで、選手たちの10秒間の最大平均パワー(MMP:Maximal Mean Power)が、どの程度の「累積仕事量(kJ/kg)」の後でも維持できるかを比較した研究について紹介する。
■研究の概要
- 比較した指標: 10秒間のMMP (0, 10, 20, 30, 40, 50 kJ/kg の累積仕事量の後)
- 対象: 2012~2019年に収集されたプロ選手のパワーデータ
- 分類基準
- CAT.1: 1シーズンで400 PCSポイント以上
- CAT.2: 1シーズンで400 PCSポイント未満
■結果
・休養状態(0 kJ/kg)での10秒パワー
CAT.1とCAT.2の間で大きな差は見られなかった。つまり“短時間・全力スプリント”だけを見れば、どちらのカテゴリーも同程度の最大パワーを発揮できる。
・累積仕事量50 kJ/kg (約3時間の運動量)後の10秒パワー
CAT.1の選手はCAT.2の選手に比べてパワーの減少率が小さい傾向があった。長時間走った後でも、より高いスプリントパワーを維持できることが、CAT.1選手の特徴といえる。
■疲労抵抗力(fatigue resistance)の重要性
ロードレースは数時間にも及ぶ長丁場であり、終盤には疲労が蓄積する。今回の研究が示唆するのは、“疲労が蓄積した状況でも落ち込みの少ないスプリント力”が、最終的にレースの結果へ結びついている可能性が高いということだ。
- CAT.1(成功)の選手は、終盤の決定的な局面で最大パワーに近い力を発揮できる。
- CAT.2(やや成功度が低い)の選手は、疲労のない状態では高いパワーを発揮する能力があるものの、長時間のレース後では最大パワーに近い力を発揮するのは難しい。
スプリンターとして結果を出すことを目指すのであれば、疲労抵抗力を高めるトレーニングも重要な要素になるといえよう。
参考文献
Van Erp et al. (2020)
KNOWLEDGE IS WATT: WHAT MAKES ROAD SPRINTER SUCCESSFUL?” [X: @knowledgeiswatt](https://x.com/knowledgeiswatt/status/1673765388302032905)
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