短期間の高強度インターバルトレーニング(HIIT)が心血管機能・VO2max・筋力に及ぼす影響についての研究

【FTP・LT・VO2max】【速くなるためのヒント一覧】2025年1月16日 15:59

時間効率のよいトレーニング手法として、注目度の高い高強度インターバルトレーニング(HIIT)だが、今回は、短期間のHIITプログラムが心肺機能や筋力に与える影響を検証したAstorinoら(2012)の研究について紹介する。

 

■研究概要

・対象者

  • 20名(男性・女性含む、平均年齢25.3±4.5歳、体脂肪率14.3±6.4%)
  • 身体活動量や最大酸素摂取量(VO2max)が同程度のアクティブな若年層
  • 比較のため、HIITを行わない対照群9名(平均年齢22.8±2.8歳、体脂肪率15.2±6.9%)も設定

 

・トレーニング内容

  • 2~3週間で計6回のHIITセッションを実施
  • 各セッションで反復的なウィングゲートテスト(全力の自転車スプリント)を行う
    • Day1・2では1回のセッションで4本
    • Day3・4では1回のセッションで5本
    • Day5・6では1回のセッションで6本

 

・評価項目

  • 安静時の血圧・心拍数
  • 最大酸素摂取量(VO2max)
  • 体組成
  • 酸素パルス(O2パルス)
  • ウィングゲートテストで得られるピークパワー、平均パワー、最低パワー、疲労指数
  • 膝屈曲・伸展における随意筋力(最大筋力)

 

・目的

  • 短期間のHIITが心肺機能(VO2max、O2パルスなど)や筋力にどのように影響を与えるかを検証
  • 安静時血圧・心拍数や体組成への変化も調査

 

■結果

・有酸素能力の向上

  • トレーニング群ではVO2maxが有意に増加(p < 0.05)した。
  • 酸素パルス(O2パルス)も同様に有意な向上がみられた。
  • VO2maxの改善度は、ベースラインのVO2max(r = -0.44, p = 0.05)や疲労指数(r = 0.50, p < 0.05)と関連があった。

 

・パワーの向上

  • ウィングゲートテストでのピークパワーや平均パワーが有意に向上(p < 0.05)した。
  • 短期間でも全力のスプリントを繰り返すことでパワー発揮能力を高められることを示唆している。

 

・筋力や安静時指標の変化

  • 膝屈曲・伸展の最大筋力に関しては有意な変化はなかった(p > 0.05)。
  • 安静時の血圧・心拍数にも大きな変化はみられなかった。

 

本研究の最大のポイントは、「短期間(2~3週間)のHIITでも心肺機能とスプリントパワーが向上する」という点であろう。ウィングゲートテストのような高負荷・全力のインターバルを繰り返すトレーニングは、運動時間が比較的短いにもかかわらず、高い心拍応答と筋肉への刺激をもたらし、結果としてVO2maxやパワー発揮能力が向上したと考えられる。

一方で、安静時血圧や心拍数、筋力に有意差が認められなかった点は、HIITの期間や回数、被験者のもともとの体力水準(ベースライン)などが影響した可能性がある。さらに長期的なトレーニングやレジスタンストレーニングと組み合わせることで、筋力や安静時指標にも変化が生じるかもしれない。

 

参考文献

Astorino TA, Allen RP, Roberson DW, Jurancich M. Effect of high-intensity interval training on cardiovascular function, VO2max, and muscular force. *J Strength Cond Res.* 2012 Jan;26(1):138-45.