2列ローテーションの速い列に戻る
■速い列の後ろに戻る
遅い列で下がっていくあいだは、前の人に張りつき、ドラフトを最大限に活用すべきです。そして、もうひとつの重要なポイント、2列ローテーションの速い列に戻る瞬間が来ます。集中しましょう。ぼんやりしていると気づかないうちに速い列の最後尾が前に行ってしまい、足を使ってギャップを埋めなければならなくなるからです。2列ローテーションが安定して回りはじめれば順番が一定になり、最後尾の選手、つまり、遅い列で自分のすぐ後ろにいた選手がいつ前に上がってくるのかわかるようになります。それまでは、下がっていくとき速い列の人数を数える必要があります。
動きを予想しながら先頭交代したように、速い列に戻るときも動きを予想する必要があります(図2.8)。速い列の最後尾が自分の前に出てから加速したのでは遅すぎます。目安としては、自分のフロントアクスルが最後尾の自転車のボトムブラケットに並んだあたりから加速するのがいいでしょう。加速を始めると同時にゆっくりと列を動きはじめれば、速い列のすぐ後ろに入れるはずです。このタイミングは人によっても違いますし、2列ローテーションの状態によっても変わります。いろいろと試してみてください。
図2.8. 2列ローテーションの速い列に戻る
※この記事は、『自転車レースの駆け引き』井口耕二訳・OVERLANDER株式会社(原題:『RACING TACTICS FOR CYCLISTS』トーマス・プレン、チャールス・ペルキー著・velopress)の立ち読み版です。『自転車レースの駆け引き』は、ロードレースやクリテリムで上手に走り賢く戦うための戦術・テクニック・スキルを、豊富なイラストを用いてわかりやすく解説した好著です。
※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。
■著者:トーマス・プレン
1970年代初頭から長年自転車競技にかかわる。アマチュアとして、また、プロとして長いキャリアを誇り、1986年にはUSPRO選手権で優勝。また、レッドジンジャー/クアーズクラシックの13回すべてを完走した数少ないサイクリストとしても知られている。全米選手権で常に上位に入る実力の持ち主で、1982年全米タイムトライアル選手権優勝チームのメンバーでもある。現在、コロラド州ボールダー在住。キャットアイ・サービス&リサーチセンターで所長を務めるとともに、みずから立ち上げた消費者調査とコンサルティングの会社ボールダースポーツリサーチの社長を務めている。自転車製品供給者協会の副会長でもある。常勤の職をふたつ兼務し、家族もいるが、ふつうの人がガレージセールに行くような熱心さで、いまも週末にはレースに参戦している。
■訳者:訳者:井口 耕二
翻訳者。1959年生。東京大学工学部化学工学科卒、オハイオ州立大学大学院修士課程修了。53歳でロードバイクに乗り始め、ニセコクラシック年代別3位、UCIグランフォンド世界選手権出場など、ロードレースを中心に活動している。訳書に『スティーブ・ジョブズ I・II』(講談社)、『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス永遠(とこしえ)のヒーロー』(アメリカン・ブック&シネマ)などがある。