サドルの角度について知っておきたい重要な原則
サドルの角度は、ロードバイクでの走行時の快適性や走行効率に大きく影響する。人によっては、サドルを極端に前傾(前下がり)または後傾(前上がり)させている場合もある。しかし、ホビーレーサーであれば、サドルを水平に保つことが基本になる。もし前下がりや前上がりにしているとすれば、ハンドルバーとの距離や高さなど、そもそもバイク全体のフィットが適切ではない可能性が高い。
■水平が原則
サドルは地面と平行になるようにセッティングするのが原則だ。正しい角度を確認するにはDIY用の水平器を使うか、定規や板をサドルに当て、テーブルや窓枠などの水平基準と比べるとよいだろう。
■前上がり、前下がりの問題点
前上がりにしている場合ば、ハンドルバーとの距離が遠すぎたり低すぎたりすることが多い。サドルを水平に戻すと前方へずれ落ちそうになり、それを防ぐためにサドルの後方へ座り直す動作を頻繁に繰り返すことになる。その結果として、前上がりにすることでずり落ちを防ぎたいわけだが、根本的な原因はハンドルバーとの距離や高さの不適切さにある。
一方、前下がりにしすぎると、前方へ体が滑るのを腕や手で支えることになり、腕の疲労や手のしびれなの原因となる。さらに車体の前輪に過剰な荷重がかかることで、ハンドリングが不安定になり。それに加えて、股の不快感(しびれや痛み)を悪化させるリスクが高まる。常に前方へずり落ち、それを押し戻す動作を繰り返すことで、股周辺の皮膚や神経への負担が増えるからだ。
前上がりの場合も同様に問題が大きい。サドルの先端が股の軟部組織や血管・神経を圧迫し、しびれや勃起不全リスク(男性の場合)を高めるリスクがある。骨盤の角度が変化し、腰椎(下背部)の自然なカーブが崩れることで腰痛を誘発することもある。
■例外
ただし、例外がまったくないわけではない。たとえば、骨盤の傾きや腰椎の湾曲に特徴がある(いわゆる反り腰など)ライダーの場合、わずかに(1~3度程度)前上がりにすることで座骨に荷重しやすくなり、股の軟部組織への圧迫を減らせる場合がある。ごく軽度の姿勢の乱れでも、前方へ骨盤が倒れがちなために痛みを感じる人もいる。その際はハンドルを少し高めにセッティングするだけでサドルを水平のままでも、股への圧迫を軽減できることが多い。
エアロバーを装着したタイムトライアル的な低い前傾姿勢では、体重を前腕である程度支えられるためにサドルをわずかに下げることが有効な場合がある。エアロポジションでは骨盤が前に滑りにくくなるので、必ずしもサドルを水平にしなくとも大きな問題にならないケースがある。
サドルの角度は水平を基準として微調整するのがセオリーとなる。もしサドルを大きく傾けないと座りにくいと感じているならば、それはハンドル位置やリーチ、あるいは骨盤や背骨といった身体特性を確認して調整した方がよいとのサインといえるだろう。
参考文献
Complete Medical Guide for Cyclists*, Andrew L. Pruitt, Ed.D., with Fred Matheny, VeloPress, 2006