回復促進用の機材・NormaTec MVP
高強度の練習の後の疲労回復に効果がある方法として、近年アメリカのトップ・アスリートの中で効果があると高い評価を得ているものに、NormaTec MVPという四肢に圧力を加える機材がある。
回復促進用の機材・NormaTec MVP
■元々は心臓血管系の病気の患者のリハビリ用装置
NormaTec MVPはローラ・ヤコブス博士が元々心臓血管系の病気の患者のリハビリ用の装置として開発したもので、現在はこれが転用されてスポーツ選手の回復促進ツールとしても使用されている。
この機材は腕や脚をくるめる筒状のもので、その中に脚や腕を入れてボタンを押すとコンピューター制御で腕や脚全体に圧力がかかる。作動中選手は寝ているだけだが、独特の蠕動運動(特許取得済・波のように拍動する)により腕や脚全体に動的に圧力がかり血液循環が最大化するという。
■生理学者のコメント:浮腫組織のリンパ液を押し流し、炎症を抑制
生理学者であるビル・サンズ氏のコメントは以下のようなものだ。
「賢くトレーニングし、休養し、正しく食事をすることが回復にはいちばん大事だが、それ以外に行える回復手段としてNormaTec MVPが現在ではベストだ。一定の圧力をかけ続ける加圧タイツのようなものもあるが、動的に圧力をかける方法に比べて回復を促進する効果はかなり小さい。NormaTec MVPの場合は、動的な圧力がかかるので、腫れた浮腫組織に溜まっているリンパ液が押し流される。また蠕動的に圧力がかかるので炎症も抑制される。マッサージでもこういった動きはできるものの、腕や足の全体を同時にマッサージすることはできない。」
■トライアスロン選手の利用例
あるトライアスロン選手は、練習後15分間程度冷水浴をした後に、15分から1時間程度NormaTec MVPを使用するのを習慣にしているという(使用中は横になって寝ているだけ)。
■Garmin-Cervelo・BMC・トライアスロン選手ら持久系のトップ・クラスの選手が使用
ロード・レースののプロ・チームでは、Garmin-CerveloやBMCが採用している。トライアスロンではアイロンマン世界選手権で2008・2009・2011年で優勝しているクレイグ・アセキサンダーが使用している。その他にも持久系スポーツのトップ・クラスの選手が使用しており、2010年の冬季オリンピックではアメリカチームがNormaTec Proシステム(最上位機種)を40セット採用したという。
■上位機種との機能の違いと各価格(1,500ドル・5千ドル)
最上位機種であるNormaTec Proの価格は5千ドルとかなり高額だが、NormaTec MVPは1,500ドル程度と比較的安くなっている。ProとMVPの最大の違いは、カスタマイズできるかという点とプログラム変更ができるかどうかという点だ。Proは圧力のかかるタイミングや圧力の強さ(5段階あり)を調整することができる。MVPには全体圧力が調整できるつまみがついている。
現時点では日本では流通していないと思われるが、世界の名だたるトップ・プロやトップ・クラスの選手が使用し「回復に高い効果がある」と高い評価をしていることから、今後日本への上陸が期待される要注目ツールといえそうだ。
参考URL
- Garmin-Cervelo
http://www.slipstreamsports.com/sponsors/normatec-mvp - BMC Racing Team
http://www.bmc-racing.com/us-en/athleten/bmc-racing-team - NormaTec MVP
http://www.facebook.com/pages/NormaTec-MVP/372065717824?sk=wall - NORMATEC
http://www.normatecusa.com/index.html - wiggling.net
http://wiggling.net/2008/07/post_91.html
参考文献
- SAGE ROUNTREE・『THE ATHLETE'S GUIDE TO RECOVERY』・P121~123・velopress