冬に高強度インターバルをしてもよいか
冬の間のトレーニング方法の定石は、LSDなどで距離を乗りこんで有酸素運動能力のベースを作ってから練習量・そして強度を上げて行く方法だが、LSDで効果を出すのに十分な練習時間を確保できない場合はどうすればよいだろうか。
冬に高強度のインターバル・トレーニングをしてもよいか
■最終的な結論は出ていない
「短時間しか練習できないのであれば、冬であっても比較的高強度のインターバル・トレーニングを行うのがよいのではないか」という意見もあるが、これについては議論が続いており、最終的な結論が出たとはまだいえない。
■早くにピークをつけてしまうリスク
冬に高強度のインターバルを行うことについてよく指摘されるのが「あまりにも早くピークが来てしまうリスクがある」という点だ。
ジェスパー氏の反論
しかし『短時間 効率的サイクリング・トレーニング』の著者であるジェスパー・ボンド・メデュ氏は、著書『12-week winter training program』の中で、これに対してきっぱりと反論している。
■伸びしろのある選手はピークを早くつけてしまうリスクは少ない
ジェスパー氏は、プロ・レベル以外の「まだ伸びしろがたくさんあるレベルの選手」の場合は、冬に高強度のインターバル*を行ったとしても、「あまりにも早くピークをつけすぎてしまうリスク」はきわめて低いと述べている。
*ジェスパー氏のいう「高強度のインターバル」とは主に「VO2max」~「LT下(スイートスポット)」を中心とした「有酸素運動領域での高強度」インターバルを指していると思われる。ジェスファー氏の著書の中にある12週間の冬の練習計画の中には無酸素系のインターバルは含まれていない。
■本当の意味でのピークとは
というのも「ピーク」というのは、本来有酸素能力のポテンシャルを限界まで開発し、さらにレースに特化した無酸素系のインターバルをこなし、さらにテーパリングもした上で初めて実現する。
しかし有酸素能力のポテンシャルの限界まで能力を開発するには、普通は最低でも数年間程度「有酸素運動能力を向上させるのに有効な練習」を継続しなければならない。
■本当の意味でのピークに達するには数年かかる
つまり、有酸素能力のポテンシャルにまだまだ伸びしろがあるレベルの選手であれば、本当の意味でピークに達するには最低でも数年はかかるわけで、シーズン中に「本当の意味でのピーク」をつけてしまうリスクはまずない。
■「疲れすぎで調子が落ちる」のと、「ピークをつけた」というのは違う
高強度のインターバルによってパフォーマンスが上がったあと、いったん調子が落ちることがあるのは、単に「練習し過ぎで疲れている」だけであり「ピークをつけた」というのとは違うというのが、ジェスファー氏の見解だ。
ジェスパー氏の理論の活用方法
■冬でもインターバル・トレーニングで効率的に有酸素運能力を開発できる可能性
ジェスパー氏の理論に従うのであれば、プロ・レベルの選手でない限り、冬の間もローラーなどを活用してLT(FTP)付近を中心にVO2max~耐久走を織り交ぜたインターバルを行うことで、効率的に有酸素能力を開発できるといえるだろう(ジェスファー氏は、「VO2maxレベルのインターバルが有酸素運動能力を高めるうえでもっとも時間効率がよい」との理論にもとづいた、独自のトレーニング・メニューや練習計画を『短時間 効率的サイクリング・トレーニング』や『12-week winter training program』の中で紹介している)。
■LSDは「時間効率」は悪いが「成功率」が高いトレーニング方法
ただし、ジェスファー氏は、LSDを含めた「冬に長距離を乗り込む効果」を否定していない。むしろLSDは練習の時間効率は悪いが「成功率が高い」ので、相当な練習時間を割けるのであれば、LSDを十分に行うことで「確実に有酸素能力の強固な基盤を作れる」と指摘している。冬は特にLSDの練習効率が高い時期といわれているので、土日だけでもまとまった練習時間が確保できるのであれば、LSDを行う意味はあるだろう。
参考文献
- Jesper Bondo Medhus, MD・『12-week winter training program』・P17~18・e-book
短時間 効率的サイクリング・トレーニング(TECT) 少ない練習量でパフォーマンスを最大化するためのヒント | |
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