FTP測定・推定方法の比較(コーガン方式・MAPテスト・CP)

【FTP・LT・VO2max】【パワー・トレーニング情報】2012年2月2日 14:49

パワー・トレーニングの強度設定の基準となる「FTP」の測定(または推定)方法にはさまざまな種類がある。今回は、その中から『パワー・トレーニング・バイブル』で推奨されている方法(コーガン方式)と、以前紹介した「MAPを基準としたRST方式」「GoldenCheetahを利用したCP方式」の3種類についてそれぞれの特徴・長所・短所を整理した比較表を紹介する。


FTP推定方法3種(コーガン方式・MAPテスト方式・CP方式)の比較表

■いずれにも一長一短がある

どの方法も長所や短所があり、残念ながら「これがベスト!」と言い切るのはなかなか難しい。

『パワー・トレーニング・バイブル』には他の方法も多数紹介されているが、実際に計測(または推定)する際には、自分がいちばん取り組みやすそうな方法をまずは試してみて、実際のFTPやVO2maxの設定がどうも具合が悪いようであれば、その他の方法を試して調整をするというのが現実的な方法だろう。

方式名 コーガン方式 RST方式 CP方式
基準
  • FTP
    (機能的作業閾値パワー)
  • MAP
    (最大有酸素パワー)
  • CP
    (クリティカル・パワー)
英語名
  • Function Threshold Power
  • Maximal Aerobic Power
  • Critical Power
テスト
方法
  • 5分全力走後に20分TTを行った時の平均パワーに95%をかけた値をFTPとする。
  • 1時間TTを行いその平均パワーをFTPとする。
  • ランプ負荷運動(直線的漸増負荷法)により一定のペースで負荷(パワー)を上げて行き、もうこれ以上パワーを上げれなくなった時点で終了する。ラスト1分間の平均パワーがMAPとなりその72~77%(簡易的には75%)をFTPとする。
  • GoldenCheetahで、ある一定期間のデータを抜き出し、新規アカウントを作成する。そのアカウントを開いて「クリティカルパワー」のタブをクリックするとCP値が自動的に算出される。そのCP値をFTPとする。
 特徴
  • 20分か60分のTTを行いその平均パワーを用いてFTPを算出・設定する。
  • ランプ負荷運動によりMAP(VO2maxに達する時のパワー)を測定し、それを基準にFTPを推定する。
  • 過去の任意の期間の練習やレースのパワー・データから、その期間中の理論上のCP値をGoldenCheetahを用いて算出しそれをFTPとする。
 長所
  • 20分TTであれば肉体的・精神的な負担はやや軽いので、定期的に行いやすい。
  • 60分TTはまさにFTPの定義(疲労しないで1時間出し続けることができるパワーの最高値)に準ずるものであり、もっともシンプルなFTP計測方法といえる。
  • テスト時間中本当に苦しいのは最後の5分程度なので、20分TTや60分TTに比べると精神的・肉体的な負担が軽い(定期的にテストを行いやすい)。
  • MAPテストで測定できるMAP(VO2maxに達する時のパワー)の値はテスト手順の性質上(室内で一定の機材を使い一定のペースで負荷を上げて行く)再現性(=精度)が高いと考えられる。
  • VO2maxの変化をチェックできる。
  • テストを行わずに済むのでいつでも気軽に算出できる(肉体的・精神的な負担がない)。
  • 適切な時間(特に3分間と20分間)の全力走のデータが含まれていれば、CP値とFTP値の誤差は実際問題として無視できるレベルと考えられる。
  • 過去の任意の期間のデータも簡単に検証できる。
 短所
  • 20分TTの平均ワットは、5分間全力走を行わなかった場合には、無酸素運動容量の寄与分などにより上振れする可能性が高い。
  • 60分TTは精神的にも肉体的にもかなりきつく定期的に行うのは難しい。
  • 20分TTもMAPテストに比べると精神的にも肉体的にもきつい。
  • ペーシングや路面状況などの影響で測定値にばらつきが出るとの指摘がある(テスト結果の精度が低い可能性がある)。
  • FTPはMAP(VO2maxに達する時のパワー)の72~77%(簡易的には75%)との前提に立っているので、初心者(例:40%)やトップレベルの選手(例:80~90%)のようにここから外れている場合は、FTP推定値が不適切になる可能性がある(感覚的にずれているようであれば、別の方法で再テストしたほうがよい)。
  • 3分や20分間といった長短の全力走のデータが含まれていない場合は推定値の精度が落ちる可能性が高い。
  • またデータ数が少なすぎる場合もデータの精度が低くなると思われる。
  • あくまで計算上の理論値なので、感覚的にずれているようであれば、別の方法で再テストしたほうがよい。
注意点
  • L5(VO2max)のトレーニング強度はVO2maxがFTPの106~120%の範囲との前提にもとづいているので、ここから大幅に外れている場合は、運動強度設定が適切でなくなる可能性がある。
  • MAPテストは本当に苦しい時間こそ短いものの限界まで追い込むので最後の2~3分間はかなりきついので、初心者や持病がある場合は行ってはいけない(テスト前に実施しても大丈夫か医師のアドバイスを受けるのが望ましい)。
 
参考文献
  • 『パワー・トレーニング・バイブル』・P76~77
  • 『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE』・P29
  • 『パワー・トレーニング・バイブル』・P72~75
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参照URL

参考文献

  • ハンター・アレン アンドリュー・コーガン博士・『パワー・トレーニング・バイブル』
    P72~75, P76~77, P140~142・OVERLANDER株式会社
  • Joe Friel著・『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE』・P29・velopress