自転車競技に有利な身体的特徴と最高の練習効率となる強度別時間配分

【FTP・LT・VO2max】【期分け・練習計画】2012年2月24日 17:23

ロード・レースでは有酸素運動能力~スプリント能力までさまざまな運動能力が必要になるが、ベースになるのは有酸素運動能力だ。有酸素能力はVO2maxやLTなどが代表的な指標だが、それらには「遅筋繊維の割合」「毛細血管密度」など、さまざまな身体組成が関わっている。それでは競技レベルによって、それらの数字はどの程度変わるのだろうか。今回は『スポーツ運動科学』で示されているCoyleらの研究結果をもとに、これらの具体的な数値を紹介する。


自転車競技に有利な身体的特徴

以下は、Coyleらが「エリート国内クラス(グループ①)」の選手と「優秀なクラス(グループ②)」の自転車競技の選手を比較したデータだ。自転車競技選手としてよりよい成績を収めるには、以下のような身体的な特徴が有利になることが具体的な数値で示されている。

  • VO2maxが高い(グループ① 4.54L/分 > グループ② 4.18L/分)
  • VO2maxに対するLT値の比率が高い(グループ① 79.1% > グループ② 75.1%)
  • 遅筋繊維の割合が高い(グループ① 67% > グループ② 53%)
  • 外側広筋の毛細血管密度が高い(グループ① 464本/?* > グループ② 377本/?*)

*単位:毛細血管数/繊維面積?

これらの他にも「血漿量」「心臓の1回拍出量」「筋肉のミトコンドリア量」「有酸素エネルギー発生に関する酵素量」なども影響していると思われる。『パワー・トレーニング・バイブル』のP79の表では、これらを高めるにはL2~L5での練習が有効であると示されている。


最高の練習効率となる強度別時間配分

それでは、各練習強度にどのように時間配分すれば最高の練習効率になるのだろうか。

これに関して『良いトレーニング、無駄なトレーニング』には、以下のような一節がある。

■70%:有酸素・20%:閾値・10%:無酸素

「トレーニングにおいて、各ゾーンにどれだけの時間を費やすかは各人の目的や好みによりますが、目安になるのは、毎週の練習の70%を有酸素、20%を閾値、10%を無酸素の運動に割り当てるというものです。この割合は、持久系のトップアスリートのトレーニングデータにもとづいて割り出されたものです」
  • 引用元:アレックス・ハッチンソン著, 児島修訳・『良いトレーニング、無駄なトレーニング』・P124~125・草思社

運動強度の低い有酸素ゾーンが意外なほど大きな割合を占めており、「持久系のトップアスリートにとって有酸素ゾーンでの練習の重要であること」を示す興味深いデータといえる。これは練習時間が比較的長いトップアスリートが、練習効果の最大化を狙いつつ疲労回復とのバランスをうまく取るためにベストな比率なのだと思われる。

■短時間しか練習できない場合はあてはまらない可能性がある

ただし短時間しか練習できないホビーレーサーがこの比率で練習しても必ずしもベストの効果は期待できないかも知れない点は注意が必要だ。最終的に「トレーニング強度と時間配分のベストの比率」は、各自の「体力レベル」「回復力」また「練習や回復にあてられる時間」などによって大幅に変わると思われるので、試行錯誤して自分で最適な組み合わせを見つけていく必要があるだろう。

 

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参考文献

  • ギャレット/カーケンダル編, 宮永豊総監訳・『スポーツ運動科学』・P661・西村書店
  • ハンター・アレン アンドリュー・コーガン博士・『パワー・トレーニング・バイブル』・P181・OVERLANDER株式会社
  • アレックス・ハッチンソン著, 児島修訳・『良いトレーニング、無駄なトレーニング』・P124~125・草思社