畑中勇介選手おすすめの練習方法

【FTP・LT・VO2max】【トレーニングメニュー】【ヒルクライム・上り】【レース対策情報・レース戦術】2012年3月29日 07:00

ロード・レースのプロ選手のブログには、残念ながらあまり具体的な練習方法が書かれていない場合が多い(一部の方を除く)。他方、2011年2月2日の畑中勇介選手(SHIMANO Racing)のブログには、読者からの質問に対する回答の中で、基本的な練習方法がひじょうに丁寧に具体例をまじえて紹介されている。今回は、その概略を一部補足を交えて紹介する(オリジナルのブログもひじょうに読みやすいのでおすすめです)。


LT値(乳酸閾値)*の測定

まずはトレーニング強度設定の基準となるLT値を測定する。測定方法や推定方法は、以下の3種類が紹介されている。

■血中乳酸濃度の測定

シマノでは専門家に依頼してトレッドミルやローラー台で一定のペースで負荷を上げるなどして、その都度血液を採取して血中乳酸濃度が急上昇する値(パワー)を調べる。

■1時間TTやヒルクライムの限界値(パワー)を測定

1時間TTやヒルクライムを行いその限界値をLT値とする。

■臨界動力**計算機を利用する

自転車探検!の『臨界動力計算機』に3分間と20分間の全力走のパワーを入力し、計算ボタンをクリックすると出てくる値をLT値とする。

*ここでのLT値はFTPとほぼ同じと考えられる。

**臨界動力はクリティカル・パワーのこと。これは同じく3分間と20分間の全力走のパワー・データがあれば、GoldenCheetahでも近似値を算出できる。


LT値を使った効率的な練習方法

LT値で有酸素運動の領域を上げる練習と、それ以上の負荷で無酸素運動の力の向上するための練習をバランスよく取り入れて基礎をつくる。基礎が出来上がったら、次に目標のレース内容に則した専門の練習に移行する。

■LT値の向上

まずはLT値の向上を目指す。LT値から5%程度セーブしたパワーで20分間走るなどのトレーニングを繰り返すことでLT値自体が上がる。LT値が上がれば、それまで無酸素運動領域だったゾーンも有酸素領域に走れるようになるので、ラスト・スパートまで力をためられるようになる。

■アタックやラスト・スパートでの最大パワーの向上

LT値以上のインターバル・トレーニングにより、アタック・スピードとその後の回復力を向上させることができる(これらの能力向上のためは、LT値以下で練習しても意味がない)。

例:LT値プラス20%のパワーで5分維持・3分間休憩を5本

■専門の練習

基礎ができあがったら、目標のレース内容に則した練習メニューに多く取り組む。レース内容に則した練習内容とするために、WKO+のQuadrant Analysis(4分割分析)などを活用するのも一案だろう(『パワー・トレーニング・バイブル』P308~312ご参照)。

(具体例)

  • 1時間以上のヒルクライム・レースであればLT値の向上に重点を置く
  • 40㎞のロードレースであれば、LT値を超えたレベルでの練習に多く取り組む

 

参照URL

参考文献

  • ハンター・アレン アンドリュー・コーガン博士・『パワー トレーニング バイブル』・P308~312・OVERLANDER株式会社