LTを上げるのに高強度練を組合せた方が効果的と考えられる理由 

【FTP・LT・VO2max】2012年6月29日 07:00

ロード・レースの基礎である持久力に大きく影響するのがミトコンドリアや毛細血管だといわれている。というのも長時間運動する場合には主として糖や脂肪からエネルギーを生み出すことになるが、その役割を担うのがミトコンドリアだからだ。また毛細血管には、血液に含まれる酸素などを筋肉へと送り届ける役割などがある。ミトコンドリアや毛細血管を増やすためのトレーニング方法としては、LSDやLT付近での練習(L2~L4辺り)がよく知られているが、これにはちょっとした注意点がある。

 

ミトコンドリアや毛細血管は使った筋繊維でしか増えないという指摘

■発揮する力の大きさに合わせて動員される筋肉の種類が変わる

それはミトコンドリアや毛細血管は使った筋繊維でしか増えないという指摘がある点だ。

「使った筋繊維」というと少し奇妙に感じられるかも知れないが、人間の筋肉には発揮する力の大きさに合わせて動員される筋肉の種類が変わるといった性質があると考えられている。

■低い強度では速筋繊維はほとんど使われていない

例えばLSDやLT付近といった比較的低い運動強度の場合は、主に遅筋繊維が動員されている。つまりLSDやLT付近でだけ練習している場合、遅筋繊維についてはミトコンドリアの増大や毛細血管密度の向上といった効果が期待できるが、速筋繊維はほとんど動員されていない(使われていない)ので、ミトコンドリアと毛細血管のいずれもほとんど増加しない可能性がある。

 

速筋繊維のミトコンドリアや毛細血管を増やす方法

■LTを超えると速筋繊維の動員比率が高まる

それでは速筋繊維のミトコンドリアや毛細血管を増やすためには、どうしたらよいのだろうか。

速筋繊維の動員比率が高まるのは、LTやFTPを超える高い運動強度(例:L5以上)*といわれている。よって、そういったLTやFTPを超える高強度のトレーニングを実施することが効果的と考えられる。速筋繊維のミトコンドリアや毛細血管が増え遅筋的性質を持つようになれば、結果としてLTやFTP向上につながるだろう。

*速筋繊維が動員されるような運動強度では、遅筋も引き続き動員されるので遅筋繊維を鍛える効果もある。

■低強度と高強度を組み合わせた練習メニューの意味

『パワー・トレーニング・バイブル』などで紹介されている練習メニューは、L2~L4といった比較的低強度のトレーニングとL5以上の高強度トレーニングが組み合わさった構成のものが少なくないが、これは遅筋と速筋の両方にバランスよく運動刺激を加えることで、LTやFTPを効率的に伸ばすことを意図しているのかも知れない。

 

参考文献

  • 八田秀雄著・『乳酸を使いこなすランニング』・P117, P122・大修館書店
  • 長谷川裕著・『スポーツ動作と身体のしくみ』・P76~77・ナツメ社
  • ハンター・アレン アンドリュー・コーガン博士共著・『パワー トレーニング バイブル』・P79, P176・OVERLANDER株式会社