パフォーマンステスト実施時の5つのコツ ~パワーを基準にしての体力レベルを正確に把握するために知っておきたいテクニック~
競技に真剣に取り組んでいるアスリートであれば、「(何かが)うまくいった」というのであれば、その証拠を確認したいと思うことでしょう。事実こそが重要です。パワーメーターを装着したバイクでテストを実施し、「テスト結果の数字」を確認したいはずです。「厳然たる事実」といってもよいでしょう。パフォーマンステストを実施すれば、現在の体力レベルの実態がしっかり把握できます。テスト結果は、評価やトレーニング・プログラムの最適化にも活用できます。
私がサイクリング・コーチとしてまだ駆け出しだった頃、パワーメーターを装着したバイクなどで、数人のサイクリストのテストを行いました。そのテストによって実証されたデータにもとづいて、トレーニング・プログラムを繰り返し最適化していったのです。
ここでは、パフォーマンステスト実施時に役立つ5つのコツを紹介します。
■パワー
パワーメーターを利用できる環境を整えましょう。どれくらいのパワーを出せるのかを確認することは、絶対に必要です。パフォーマンステスト実施前には、毎回パワーメーターのキャリブレーション(センサーの校正)をしておきましょう。心拍数にも関心があるかもしれませんが、このパフォーマンステストではそれほど重要視しません。パフォーマンステストのメインテーマは、パワー(単位:W)を確認することです(W/kgを確認できればより望ましいといえます)。
■サポート
体力テストはひとりで行わず、コーチ、チームメイト、友人、家族でも構わないので、必ずアシスタントを1名つけるようにしましょう。アシスタントがいれば、モチベーションが上がり、またテスト手順を守りやすくなるので、テスト中、ペダルを踏むことに集中できます。
■特異性
パフォーマンステストの内容は、できるだけ明確な目標に焦点を合わせた内容にしましょう。万能なテスト方法というのはありません。パフォーマンステストは、テストしたいと思っている体力要素の指標値を計測できる内容でなければいけません。有酸素持久力のパフォーマンスを計測したいのであれば、例えば、30分間の最大パワーを計測するような内容とすべきです。ヒルクライムのトレーニングについていえば、FTPが、サイクリストにとって最も改善する価値のある指標値になるでしょう。
■テスト手順
パフォーマンステストの手順を詳細にペーパーに書き落としましょう(アシスタントが書いたペーパーを使用しても構いません)。体重、ワット数、心拍数といったデータを記録します。屋外でパフォーマンステストを実施するのであれば、天気などの気象条件も記録しておきましょう。詳細に記録すればするほど、次回テストの時に同じ条件を再現しやすくなります。
■テスト結果を評価する
パフォーマンステストを実施したら、その結果を評価し、意見交換をすることが絶対に必要です。ルーチンを最適化し、よりハードにトレーニングするための発憤材料として、パフォーマンステストの結果を活用しましょう。
テスト結果を評価するさいは、テスト実施時の条件面も、十分に考慮入れることが重要です。2つのテスト結果を比較して、「変わったのはパフォーマンスだけだ」と言い切れるほど、同じ条件下で実施できたでしょうか?
まったく同じ条件下でテストを実施できたのであれば、自信を持ってテスト結果を評価できるでしょう。一方、回復レベル、水分補給、モチベーション、機材面などパフォーマンスに何らかの悪影響が及ぶような問題が複数あったのであれば、トレーニングの進捗状況を正確に評価することは難しくなります。
パフォーマンスには、毎日何らかの変化があります。ですから、毎週30分間の最大パワー・テストを実施すれば、パフォーマンスの経時変化が確認できます。進歩度合いの推移をモニタリングする観点からは、このような手法にも相応の意味はあるでしょう。しかし、よく鍛えられたアスリートであれば、そのような短期間で、パフォーマンスにかなりの変化が現れるということはまずありません。その意味で、パフォーマンステストを頻繁に行う必要はないといえます。
- 記事出典:ジェスパー・ボンド・メデュス著・加藤浩幸訳・高嶋竜太郎監修・『12週間 冬のサイクリング・トレーニング・プログラム』(OVERLANDER株式会社)の抜粋
※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。