サイクリストとして知っておきたい、VO2maxインターバルの基礎知識 ~VO2maxインターバルは、きわめて時間効率がよい~
VO2maxは、心肺能力を示すベストの指標であるとともに、すべての持久系競技の選手にとって成功の中心的役割を担うことが、広く知られています。
ランナー、トライアスリート、ボート選手、水泳選手、もちろんサイクリストも(表彰台を狙う選手は特に)、VO2maxを最大化するように練習時間を割り振る必要があります。
持久系スポーツの競技中に勝敗を分けるような局面では、酸素摂取量はVO2maxの極限に近づきます。そしてVO2maxの値が最も高い選手がレースに勝つことが多い傾向にあります。
ただし、VO2maxはそう極端に高いレベルまで上げることはできません。持久系スポーツでは、大きな有酸素エンジンを備えていることが決定的に重要になります。ロードレースを例に考えてみると、大部分の時間はVO2maxよりも低いパーセンテージにとどまります。しかし、スプリント、逃げ、過酷な上りといった局面では、VO2max近くでのパフォーマンスが必要になります。「そういった瞬間にあと20W絞り出せるとしたら」と想像してみてください。
■VO2maxインターバルは進歩を加速する
高強度インターバルトレーニングによって、VO2maxを強化できます。強度がVO2maxに近づけば近づくほど、体力とパフォーマンスを向上させる効果が高まります。高強度トレーニングの長所は、練習量を少なくしながらパフォーマンスを向上させることができる点です。
エリート選手が、さらに進歩するには、VO2max付近でのトレーニングが必要です。これが、プロ選手のトレーニング・プログラムにVO2maxインターバルがいつも組み込まれている理由です。「もっと強くなりたい」と思っているやる気十分のサイクリストや、将来有望な選手にも、強くおすすめします。
高強度トレーニングの短所は、きわめてハードである点です。また、VO2maxインターバルを初めて行う場合、最初の2~3回は完璧にペース配分できないかもしれません。しかし、ペース配分には学習曲線の効果が期待できます。ですからインターバルの後には必ずペース配分を評価し、次のトレーニング・セッションに活かしましょう。
VO2maxトレーニングを始める前に、最大酸素摂取量での平均パワー出力を推定するために、5分間の全力テストを行ってください。他のテスト方法もありますが、この方法はシンプルで取り組みやすく、信頼性も高いといえます。
■VO2maxインターバルは、きわめて時間効率がよい
「FTPちょうどでのトレーニングが、最適のトレーニング方法だ」という通説があります。しかし実際には、FTPちょうどでのトレーニングに何ら魔法のような効果はありません。FTPより少し上や少し下でのトレーニングでも、ほぼ同じようにパフォーマンスが向上します。
よく鍛えられた選手は、VO2max近くでのトレーニングが必要です。それはVO2maxとFTPの両方を向上させる効果があるからです。VO2maxとFTPトレーニングのどちらも、あらゆるレベルのサイクリストに有益です。FTPかVO2maxインターバルを正しく実施すれば、大きな成果を手にすることができるでしょう。完璧な組み合わせを見つけることができれば、さらによい結果を出せるかもしれません。
正しい強度でVO2maxインターバルに取り組めば、パフォーマンス向上に役立ちます。また、きわめて時間効率がよい点も特徴です。あらゆるレベルのサイクリストが、トレーニングにVO2maxインターバルを組み込むべきですが、その中でもエリート選手とプロ選手については、必要不可欠とさえいえるでしょう。
サイクリストには個人差があり、すべての人に効果があるたったひとつの練習方法はありません。しかし、プロ選手やエリート選手が潜在能力を完全に開花させたいのであれば、VO2maxとFTP・インターバルを組み合わせてトレーニングすることが必須です。
VO2maxとFTP・インターバルをうまく使いこなせば、あらゆるレベルのサイクリストがさらなる進歩を実現できるでしょう。これは、有酸素エンジンを高いレベルに保つ必要のあるトップレベルの選手も同様です。
VO2maxインターバルは、有酸素性エネルギー供給機構の強化に効果的です。VO2maxインターバルは、きっちりペースをコントロールしながら行う方法が一般的ですが、スピニングクラスに参加しながら行う、という方法もあります。スピニングクラスの内容が、ごく一般的なものであれば、最大心拍数付近まで上げるチャンスがあるはずです。
この方法がすばらしいのは、VO2maxトレーニングの精神的な負担感を軽減できる点です。
レースシーズンが近づき、VO2maxトレーニングがより重要になるタイミングでも、この方法であれば集中力を高く維持したまま取り組めるでしょう。
- 記事出典:ジェスパー・ボンド・メデュス著・加藤浩幸訳・高嶋竜太郎監修・『12週間 冬のサイクリング・トレーニング・プログラム』(OVERLANDER株式会社)の抜粋
※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。