1日の練習を分割するかどうかについてのヒント
比較的時間に余裕がある場合は、1回に長時間練習するのと、2回に分けて練習するのと、どちらが効果的なのだろうか。今回は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル』などを参考に「1日の練習を分割するかどうかについてのヒント」を紹介する。
1日の練習を分割するかどうかについてのヒント
結論からいうと、トレーニングの目的によって「1回に長時間練習するほうがよい」か「2回に分けるほうがよい」かが変わってくる。
■1回に長時間のほうがよい場合:持久力養成
長距離レース向けに持久力を養成したい場合は、なるべく1つにまとめたほうが、練習効果が高いと考えられる。
持久力の養成(=有酸素運動能力の向上)には、「身体が脂肪をエネルギーとして使用する能力の刺激」「心肺機能などへの刺激」「ホルモン・酵素への刺激」などが必要になる。
■脂肪をエネルギーとして使用する能力への刺激
特に「身体が脂肪をエネルギーとして使用する能力の刺激」に刺激を加えるには、一度に長距離(長時間)を走るほうが効果的といわれている(中程度の運動強度までは、運動時間が長くなるにつれて、運動時に脂質を利用する割合が高まることが知られている)。
■精神面の鍛錬
また他にも「長時間走りぬくための精神力を鍛えられる」といった効果も期待できるだろう。
■2回に分けたほうがよい場合:高強度のメニュー・スキル習得
「筋力」「筋持久力」「スプリント」「無酸素持久力」といった比較的高強度のメニューを行う場合は、2回に分けた方が効果的と考えられる。
■練習の質を高く保つ
高強度のメニューでは、能力を伸ばすのに必要な必要な強度でしっかり追い込み「練習の質を高く保つ」ことが重要になるが、練習を2回に分ければ、間に回復時間を挟むことができるので、より「質の高い練習」ができる可能性が高いだろう。
■仮眠による成長ホルモン分泌促進
また、練習の間に仮眠できるのであれば、成長ホルモンの分泌を促進することができ、これによって体力向上をスピード・アップできると考えられる。
■スキル練習は午前中に取り組んだほうが効果が高いという研究事例
「スピード・スキル」といった技術面を磨く場合は、「正しい動きを繰り返すこと」が重要になるので、短時間でも高い集中力を保って取り組んだほうがよいだろう。
「スキル練習には午前中に取り組んだほうが効果が高い」といった研究事例が報告されているので、午前中に集中的に行うというのも一案だ。
注意点
■回復力には個人差が大きい
ただし「仕事・勉強といった日常生活負荷」「睡眠時間」「年齢」などによって回復力には、かなりの個人差がある。「高強度のメニューを」2回に分けても回復が追い付かないようであれば、1回に止めるなど適宜調整したほうがよいだろう。
■トレーニング負荷も影響する
またかなりの高強度で追いこんだ場合は、同じ時間練習し同じ時間回復に充てても、回復が間に合わない場合も考えられる。「疲労回復に必要な時間の目安」などを参考に、練習を分割するべきかどうか判断するのも一案だろう。
参考文献
- ジョー・フリール著・児島修訳・『サイクリスト・トレーニング・バイブル』・P212・OVERLANDER株式会社