経済性(エコノミー:Economy) ~冬場にペダリング・ドリルに取り組み、年間を通して技術を向上させる努力をするのが重要な理由~【CTB】
経済性(エコノミー:Economy)
一定の最大下速度で走行する時、一流サイクリストの酸素の消費量は、アマチュア・アスリートよりも少なくなります。エリート選手は、少ないエネルギーで、アマチュア選手と同じ力を発揮できるのです。これは、自動車の購入時に気になる、車の燃費効率と同じです。少ない燃料で同じパワーを発揮できる方が、当然、レースでは有利になります。
研究は、持久系スポーツの選手のエコノミーが向上する条件として次を挙げています。
- 遅筋線維が多い(遺伝的要因が大きく左右する)。
- BMI(体格指数:体重と身長から算出する比率)が低い。
- 心理的ストレスが少ない。
- 体に合った、空力に優れた軽量の機材を使用している。
- 高速時に、前方投影面積を小さくしている。
- エネルギーを無駄にする動きが少ない。
疲労時には普段使わない筋肉も動員されるため、エコノミーに悪影響が出ます。これは、大事なレースにはしっかりと体を休めて臨んだ方がよい理由の 1つでもあります。レース終盤に、疲労のためエコノミーが悪化すると、「ペダリングやハンドルさばきが雑になっている」と感じるかも知れません。レースが長くなるほど、エコノミーのよしあしが結果を左右するようになります。LTと同様、エコノミーもトレーニングで大きく高められます。持久力が全般的に高まり、自転車スキルに磨きがかかれば、エコノミーは向上していきます。冬場にペダリング・ドリルに取り組み、年間を通して技術を向上させる努力をするのが重要なのもそのためです。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。