サイクリストとして知っておきたい、エコノミーの基礎知識 ~ペダリングがエコノミーにとって最も重要な要素である理由とは?~
■エコノミーとは?
「エコノミー」とは自動車の評価基準である「燃費」に該当します。一定量のガソリンで遠くまで行けるほど、その車はエコノミカル、経済的だということになります。自転車でもエコノミーという評価基準があります。この場合、酸素1ミリリットルにつき何メートルか、という単位になるだけです。最大下強度のパワーでペダルを回すとき、それに必要な酸素量が少ないほど、あなたは経済的です。そしてレースの時間が長ければ長いほど、経済的である意味は、大きくなります。
アイアンマンレースに出るトライアスリートにとって、エコノミーはパフォーマンスを左右する大きな要素です。45分間のクリテリウムのあるロードレーサーにとっても、エコノミーはやはり重要ですが、勝負の分かれ道というほどではありません。その理由は、アイアンマンでのバイクは、45分間のクリテリウムよりもはるかにパワー出力が低いことにあります。クリテリウムはATとVO2maxの中間の強度で行われます。
したがって、それぞれのレースパフォーマンスには、重要な体力指標があるのです。アイアンマンレースでは、おおよそATの70%で走行します。これほど長いレースでは、エネルギーを無駄使いしている余裕はありません。レース中、体内の消化器が食料や飲料をエネルギーに転換できる量には限りがあります。エコノミーが低く、エネルギーの消費される速さが供給される速さを上回ると、サイクリストは「壁にぶつかる」ことになります。クリテリウムの選手はいくらかエネルギーを無駄にしても大丈夫です。なぜなら、レースの結果は浪費したエネルギーの量では決まらないからです。このような短いレースでは、燃料は十分に蓄えられていますから、レースが終わるまでに補給が必要になる選手はいません。
自転車に乗っているとき、エコノミーは多分20から25%程度でしょう。そうすると、燃焼されたカロリーの75%から80%が、パワーを生み出していないことになります。この失われたエネルギーのほとんどは、放射熱として消費されています。かなりの量を浪費しているように見えますが、特別なことではありません。面白いことに、VO2maxの高い選手は、それ以外は同レベルのVO2maxの低い選手に比べ、いくらかエコノミーに劣る傾向にあることが、研究の結果示されています。
■エコノミーにおいて、ペダリングが重要な要素である理由
エコノミーを左右する要素はたくさんあります。そのうちのいくつかは、自分ではコントロールができません。たとえば、太股の長さ(脚の長さに対して大腿骨が長い人は、短い人よりもペダリングのエコノミーが高い)や、速筋線維と遅筋線維との割合(遅筋線維のほうがエコノミカルである)などです。これらは親から受け継いだもので決まってしまうことが大きいのです。
エコノミーのうち、自分でコントロールできる最も重要な要素は、ペダリングです。「ゴリゴリ踏む人」(低いケイデンスで重いギアを踏む人)は、「スピナー」(高ケイデンスでペダルを回す人)よりも、エコノミーで劣ります。ペダルにどれだけ速くトルクをかけるかということは、パフォーマンスに大きく影響します。パワーメーターがあれば、もっともエコノミカルなケイデンスの範囲をつきとめることができます。これはパフォーマンスにとって、なくてはならない情報なのです。
結論としては、パワーメーターを買うという選択は正しかった、ということです。パワーメーターは、自分のパワー出力を教えてくれるだけでなく、トレーニングを続けるうえで、そのパワーがどれだけ向上しているのか、モニタリングを可能にしてくれます。言い換えれば、トレーニングの強度をモニターし、注意するのに最適な方法なのです。パワーメーターがあれば、サイクリストとしてより賢くなるだけではなく、今までにないほど強く、速くなれるでしょう。
- 参考文献:ジョー・フリール著・篠原美穂訳・『パワートレーニング・ハンドブック(仮題・2018年発売予定)』(OVERLANDER株式会社)・本文の抜粋
※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。