期分け(ピリオダイゼーション)を用いた年間計画の具体例
期分け(ピリオダイゼーション)の手法を用いて練習計画を立てる時中心になるのは「メソサイクル」だが、他にも「マクロサイクル」「マイクロサイクル」というものもある。今回は、それぞれの概略を説明し「メソサイクル」の年間計画の具体例を紹介する。
各サイクルの設定の仕方
■期間中に練習量や強度を徐々に増やしていく
それぞれの違いは期間の長さによるもので、各サイクルのいずれも「期間中に練習量や強度を徐々に増やしていくこと」が基本になる。
例えば、基礎期間(メソサイクル)に3か月かける予定である場合、その期間をそれぞれ2~3に分割し各4~6週間ごとのマイクロサイクルを設定する。最初のマイクロサイクルでは合計1,000㎞走行したのを、次のマイクロサイクルでは1,200㎞に増やすといった具合に徐々に練習量を増やしていく。
■各サイクルの間には回復期を設ける
注意が必要なのは、体にかけた負荷に対する反応を体に定着させるために、各サイクルの間には回復期を設けることが必要となる点だ。この方法によりロード・レースで必要な体力や様々なスキルを余裕をもって段階的かつ体系的に向上させていくことができる。
各サイクルの説明
■マクロサイクル:1年・1シーズン・またはそれ以上
「マクロサイクル」は通常1年(1シーズン)のことをいう。5年間の長期目標がある場合は、5つのマクロサイクルを積み重ねることになる。5年間をひとつのマクロサイクルとみることもできる。
■メソサイクル:1週間~2か月
「メソサイクル」は通常1週間~2か月程度の期間の練習ブロックのことをいい、年間のピリオダイゼーション計画を組む時の中心的な期間となる。アメリカなどで広く知られている『The Cyclist's Training Bible』の著者ジョー・フリール氏が推奨するメソサイクルの種類は以下ようなものだ。
■メソサイクルの種類
- 移行期間(1週間~1ヶ月半):回復に専念する。
- 準備期間(3週間~1ヶ月):本格的なトレーニングに入るための準備をする。
- 基礎期間(2~3ヶ月):スピードスキル・筋力・持久力を高める。
- 強化期間(1ヶ月半~2ヶ月):練習強度を上げ優先順位の低いレースに出る。また苦手分野克服のための練習をする。
- ピーク期間(1~2週間):テーパリングを行いレースの準備をする。優先順位が中~低のレースに出る。
- レース期間(1~3週間):優先順位が中~高いレースに出場しレース能力を維持する。
■練習量は基礎期間が最大に、強度は強化期間が最大になる
各期間の練習量と強度の関係のおおまかなイメージとしては、基礎期間まで徐々に練習量と強度を上げて行き、強化期間以降は量を減らすと共にレース対策に特化した練習として強度を上げて行くというものだ(下図ご参照)。練習量は基礎期間が最大に、強度は強化期間が最大になる。
■マイクロサイクル:1~6週間
「マイクロサイクル」はメソサイクルの間に練習強度と運動量(と休息)を増加させていくためのプラットフォームとなる1~6週間の短いサイクルのこと。毎日の練習内容を段階的に発展させていくように計画を組む。
メソサイクルの年間計画例
最後にメソサイクルの年間計画例を以下に紹介するのでご参考まで(年間計画作成のさいにご参考ください)。
■ピークが1回の場合(1)
- 移行期間:11月
- 準備期間:12月
- 基礎期間:1月
- 強化期間:2~3月
- ピーク期間:4月
- レース期間:5~6月
■ピークが1回の場合(2)
- 移行期間:1月
- 準備期間:2月
- 基礎期間:3月
- 強化期間:4~5月
- ピーク期間:6月
- レース期間:7~8月
■ピークが2回の場合(1)
- 移行期間:9月
- 準備期間:10月
- 基礎期間:11~12月
- 強化期間:1~2月
- ピーク期間:3月
- レース期間:4月
- 強化期間:5月
- ピーク期間:6月
- レース期間:7月
■ピークが2回の場合(2)
- 移行期間:9月
- 準備期間:10月
- 基礎期間:11~1月
- 強化期間:2~3月
- ピーク期間:4月
- レース期間:5月
- 強化期間:6~7月
- ピーク期間:8月
- レース期間:9月
参考文献
- Joe Friel著・『The Cyclist's Training Bible』・P106~115・velopress
- Robert Panzera著・『Cycling FAST』・P71, P178・Human Kinetics