練習は1 回、それとも2 回?【CTB】

【期分け・練習計画】【立ち読み版】2013年10月21日 04:00

練習は1 回、それとも2 回?

3 時間の練習を1 回するよりも、同じ日に90 分の練習を2 回する方が効果的なのでしょうか?その答えは、練習の目的によって変わります。

■2回に分けるメリットのある練習

スピード・スキル、筋力、筋持久力、スプリント・パワー、無酸素持久力の向上が目的であれば、答えはイエスです。これらの能力を鍛えるには、基本的に1 日2 回に分けて練習した方が1 回のロング・ライドよりも望ましいといえます。走行の合間に、回復時間を組み込めるからです。

■持久力養成の場合は2回に分けてもメリットはない

ただし、目標が長距離レースに向けた持久力養成である場合は、1 日2 回に分けてもメリットはないでしょう。この場合は、長時間練習を1 回だけした方が効果が高くなります。

持久力トレーニングによって生理学的なメリットを得るには、心臓、肺、血液などといった有酸素システム以外にも、筋肉系と神経系にも負荷を与える必要があります。さらに、有酸素系の体力向上には、エネルギー、ホルモン、酵素の生産能力を向上させる必要もあります。たとえば、中程度の強度での運動をしている間、体は脂質と糖質からエネルギーを生み出します。練習を開始すると、体は主に体内に蓄えた糖質を使ってエネルギーを生み出します。そして運動が長引くにつれ、エネルギー源は次第に糖質から脂質へと移行します。この脂質を燃やし、エネルギー源とする状態に素早く移行できるようになることが持久力を向上させる有酸素運動のメリットといえます。

一度に3 時間走り続けるのではなく、90 分ずつ2 回に分けて練習すると、脂質をエネルギーとして走る時間が短くなるので、その結果として、このエネルギー生産システムを鍛えにくくなってしまうのです。一度に長距離を走れば、体が脂質をエネルギー源とする働きや、前述した持久系の様々な機能を刺激しやすくなります。

また、長時間走り抜くことで、精神面も鍛えられます。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。