勝つための5つの要素 (プランニング)【TTB】
プランニング
■勝つための5つの要素
スポーツについては、さまざまなことが語られ、読者のみなさんも見聞きしてきたと思いますが、成功の「秘密」というものは存在しません。エリート選手やコーチのなかには「最新かつ最高のトレーニング法」を発見したと思い込んでいる人もいますが、一つとして新しいことはありません。
インターバルトレーニングにしても、さまざまな種類のものが1920年代から広く用いられてきました。ファルトレクトレーニングには90年の歴史があり、ピリオダイゼーションの概念が生まれたのは1960年代のことです。LSD(ロング、スロー、ディスタンス)の流行は30年前のことであり、テンポ・トレーニングも1900年代初頭には広まっていました。そもそも、ハイボリュームのトレーニングが当たり前になったのは、第一次大戦後のことなのです。同じようなことを挙げればきりがありません。
何人か、歴史に名を残す持久系運動選手について調べてみれば、ゆるぎのない1つの事実にたどりつくことでしょう。それは、誰かとまったく同じトレーニング方法をとっている人はいない、ということです。実際、史上最高と言われるスイマー、サイクリスト、ランナーが実践したトレーニング方法は多岐にわたっており、考えられるすべてのトレーニングを網羅しています。LSDのみ行う人もいればスプリントを好む人もいます。また、ロングインターバルに専念する人がいるいっぽうで、何種類かのトレーニングを組み合わせるほうがいい、という人も多くいます。あるいは、ヒルトレーニングの効果を信じる人もいれば、平坦なグラウンドから離れない人もいます。ありとあらゆるトレーニングを、必ず誰かがすでに行っているのです。
たしかに、スポーツのトレーニングに秘密などありません。しかしスポーツには、今までも、そしてこれからも変わることのない、勝つための要素が5つあります。
- 目標(Purpose):自分の目標が明確にわかっている。
- 情熱(Passion):目標を達成しようとする熱意がある。
- 計画(Planning):目標を達成する方法を決める。
- 努力(Perspiration):計画に沿って懸命に練習する。
- 忍耐(Perseverance):目標を達成するまでは、なにごとにも屈しない。
7~9章の目的は、3番目の要素、つまり計画の立て方についてのアドバイスです。7章では年間計画、8章では週間計画を説明し、9章ではディスタンス別の計画のサンプルを提示します。
※この記事は、『トライアスリート・トレーニング・バイブル(TTB)』篠原美穂訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE TRIATHLETE'S TRAINING BIBLE 3RD EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『トライアスリート・トレーニング・バイブル』は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』の著者であるジョー・フリール氏による、トライアスロン教本の世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、Training Bible Coachingの創設者かつ代表者であり、本書で紹介しているコーチング哲学・メソッドを学び応用している、世界中の持久系競技の指導者とともに活動しています。Training Bible Coachingには、トライアスロンを趣味とする人からエリートトライアスリート、サイクリスト、マウンテンバイク愛好者、ランナー、スイマーまでと、幅広い層とさまざまな競技のアスリートが登録しています。
フリールのコーチ歴は長く、1980年から持久系アスリートの指導にあたってきました。彼が指導した選手は、初心者、トップアマチュア、プロ選手とさまざまです。なかにはアイアンマンレースの優勝者、米国内外のチャンピオン、世界選手権代表、そしてオリンピック代表もいます。
彼の著書は本書以外に、『サイクリスト・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Mountain Biker's Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』があります。また、VeloPress社のビデオ『Ultrafit Multisport Training』シリーズの編集者でもあります。フリールは運動科学の修士号を取得しており、上級コーチの有資格者でもあります。米国トライアスロン指導者委員会においては、その設立に携わり、会長を2期にわたって務めました。
フリールは、雑誌『Inside Triathlon』、『Velo News』のコラムを執筆するかたわら、米国以外の雑誌やウェブサイトにも特集記事を寄稿しています。持久系競技のトレーニングに関することがらについて、実に幅広いメディアから意見を求められており、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』のほか、『Vogue』誌にまで紹介されています。
フリールは、持久系アスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業や政府機関のアドバイザーとしても活躍しています。
エイジグルーパーとしてのフリールは、コロラド州マスターズ選手権優勝、ロッキーマウンンテン地区、サウスウェスト地区のデュアスロンエイジ別優勝、全米代表チーム入り、世界選手権出場と、輝かしいキャリアを誇ります。サイクリストとして米国の自転車レースシリーズにも参加しています。フリールへのご質問やご意見は、ウェブサイト www.trainingbible.comで受けつけています。
訳者紹介
篠原 美穂
慶應義塾大学文学部 (英米文学専攻 )卒業、翻訳士。ほかの訳書に『アドバンスト・マラソントレーニング』、『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』(ともにベースボール・マガジン社)がある。