持久力(Endurance)とは、疲労の発生を遅らせて運動を継続する能力のこと【CTB】
持久力(Endurance)とは、疲労の発生を遅らせて運動を継続する能力のこと
■有酸素能力を高めるためには、相当の忍耐力が必要
持久力とは、疲労の発生を遅らせて運動を継続する能力のことです。本書では特に、「有酸素レベルでの運動」について使用します。大会によって、求められる持久力は変わります。たとえば、1時間のレースに 5時間走行する持久力は要りません。
極端な例として、コロラド州の高地の砂漠地帯で開催される 100マイルのマウンテン・バイク・レース、「レッド・ビル 100」に必要な持久力を考えてみましょう。このレースで何度も優勝しているデイブ・ウィーンズは、高地でペースを維持するのに十分な持久力と、スプリントでランス・アームストロングなど他の選手を振り切ってゴールするだけの体力がありました。
■有酸素持久力の強化方法
体力に関する他の要素と同様、持久力も一般的なトレーニングから始め、徐々に専門的なトレーニング・メニューに移行しながら強化していきます。具体的には、心肺系(心臓、肺、血液、血管)の機能を向上させることで、有酸素持久力の基礎を作り上げます。シーズンはじめの特に寒い時期に、スキーやランニングなど複数のスポーツを組み合わせたクロス・トレーニングで、この基礎作りを行うこともあります。1年中、自転車に乗っていたい人は、冬場にシクロクロスのトレーニングをしてもよいでしょう。シクロクロスはランニングと自転車を組み合わせたもので、ハンドリング・スキルを磨けます。シーズンが進むにつれ、専門的なトレーニングを増やし、1回に走る距離も長くします。基礎期(通常年間トレーニングの 8~ 12週間を占める)の終盤には最低でも 2時間、あるいは出場予定のレースの中で最長距離のレースと同じくらいの距離を走り込みます。
■有酸素能力を高めるためには相当の忍耐力が必要
持久力トレーニングに関する科学的研究は豊富にあります。研究によれば、持久力トレーニングがもたらすものには、VO 2maxの向上、筋肉に血液を供給する毛細血管の増加、ミトコンドリア密度の増大、血液量の増加、一定強度での運動時の心拍数低下などがあります。持久力はロード・レースの基礎となる重要な能力ですが、ベテランのサイクリストの多くは自らに持久力があることを当然と見なし、その能力を十分に鍛え上げることができていない場合があります。一般的に、数週間程度、持久力に重点を置いた、中くらいの運動強度で長距離を乗り込んでから集団での高速走行やインターバル・トレーニングを始めることで、初めてパフォーマンスが向上します。有酸素能力を高めるためには、相当の忍耐力が必要なのです。
■初心者は、まず持久力を鍛える必要がある
初心者サイクリストにとって、持久力は能力を伸ばすうえでとても重要な要素です。ロード・レースは、突き詰めれば持久系のスポーツだといえます。ゴールにたどり着くだけの持久力がなければ、他の能力がどれだけ優れていても意味がありません。他の能力を高める前に、まずは持久力を鍛えなくてはなりません。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。