筋力(Force)とは、抵抗に打ち勝つ能力のこと【CTB】

【期分け・練習計画】【立ち読み版】2014年9月29日 00:01

筋力(Force)とは、抵抗に打ち勝つ能力のこと

■筋力の強い選手の好例

筋力は、抵抗に打ち勝つ能力のことです。サイクリングでは、上り坂や向かい風の中を走行する時にこの能力が必要になります。筋力は、スピードを上げるためにどれくらい重いギアを踏めるかにも深く関わっています。所属するチームや一緒に走るグループにいる「筋力の強い選手」が何人か頭に思い浮かんだかも知れません。彼らは低ケイデンスで重いギアを踏むのを好みます。ツール・ド・フランスのアルプス越えで力強いペダリングを見せるイヴァン・バッソやヤン・ウルリッヒが好例です。

■能力を向上させるうえで重要なプロセス

筋力は、1年を通じて一般的なトレーニングから専門的なトレーニングへと段階を踏むことで発達します。シーズンはじめはウェイト・リフティングから始め、やがて重いギアでの反復走行、そして上り坂でのトレーニングへと移っていきます。一般的な練習から専門的な練習への移行は、ひじょうに一般的なトレーニング・プロセスです。ウェイト・リフティングの時には自転車に乗らないので、一般的なトレーニングだといえます。重いギアでのヒル・リピートは、自転車に必要な専門的なトレーニングです。この「一般的から専門的」というプロセスは、レースに必要なすべての能力を向上させるうえで、とても重要な概念になります。

■筋力トレーニングの 2つの効果

筋力が向上すれば重いギアを踏めるようになるだけではありません。多くの研究が、筋力が向上すると AeTから LTを大幅に超えた強度にいたるまで、あらゆる運動強度でパフォーマンスが改善することを示唆しています。その原因として、筋力トレーニングの 2つの効果が考えられます。それは「速筋線維が遅筋線維の役割を担うようになること」と「遅筋線維が肥大し、筋力が高まること」です。つまり、トレーニングによって、より多くの筋線維が連動し、同じ運動に対して大きなパワーを発揮するようになるのです。筋力が高まると、コースの性質に関わらず、重いギアで高速走行をしやすくなります。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。