時間がない時のトレーニングをどうするべきか?
年の瀬に入りお忙しい方も多いのではないでしょうか?
先日、セミナー参加者から「時間がない時のトレーニングをどうするべきか?」とのご質問を頂きましたので、今日はこのテーマについて書いてみたいと思います。
この時期は冬期休暇を前にお仕事が年末の追い込みに入っているうえにトレーニングに出発する準備にも時間がかかります。こういった時は、多くを求めず与えられた時間の中でテーマを絞ってトレーニングした方が結果は良いです。
■ トレーニング時間を決める。
時間がなくてもウォームアップ(WU)とクールダウン(CD)は省略しない方が良いです。
特にマスターズの年齢に入った選手は体が温まるのに時間がかかるので、ケガを防ぐためにもしっかりウォームアップしましょう。
またクールダウンを省略すると疲労を翌日に持ち越すことにつながります。翌日以降に時間が確保できた時にしっかりトレーニングするためにコチラも省略することは得策ではありません。
ですからトレーニング全体の時間からWUとCDを引いた時間がメインセット(MS)に割ける時間になります。
・トレーニング全体の時間=(WU+CD)+ MS
・WU/CD 時間の目安
- ウォームアップ(WU):10-20分
- クールダウン(CD):5-10分
- テンポ以下の強度の低いトレーニングであれば、WU10分+CD5分=15分
- FTP以上の強度であれば、WU20分+CD10分=30分
以上がメインセット(MS)以外に必要な時間です。
・MSに割ける時間
例:1時間のトレーニングの中でMSに割ける時間
- 強度の低いトレーニング:60分-15分=MS45分
- 強度の高いトレーニング:60分-30分=MS30分
■フォーカスを決める
時間がない場合は、FTP、テンポ、VO2maxにスプリント・・・などと全体的に能力を刺激することはできません。行ったとしても各パワーゾーンを刺激する時間が短すぎて十分な効果が得られないからです。
FTP以上のトレーニングに関しては上の表の右側にある時間を目安にフォーカスを決めましょう(例:FTP10分以上、VO2max3分以上、テンポは20分程度であればOKです)。
時間がない時は刺激するパワーゾーンはひとつもしくは2つに絞りましょう。
■トレーニングを組む
では実際のトレーニング例を挙げてみましょう。
---1時間のトレーニング例---
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・FTPトレーニング 1時間
WU:15-20分 3 x 1分の高回転走を入れて足を目覚めさせよう。
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MS1:FTPインターバル
(2-3)x 10分 FTP(Power Z4 91-105%, HR Z4, RPE 4-5)
レスト:5分流し
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CD:5-10分
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・VO2max トレーニング 1時間
WU:15-20分 3 x 1分の高回転走を入れて足を目覚めさせよう。
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MS1:10分 SST(88-94%)
これはMS2に向けてアップの仕上げ。できる限り足を使わないペダリングで高い出力を維持しよう。
流し:5分
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MS2:VO2maxインターバル
3 x 3分 VO2max(Power Z5 106-120%, HR Z5, RPE 6-7)
レスト:3分流し
流し:10分
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CD:5-10分
■それでも時間がない場合
1時間も確保できない場合もままあるかと思います。そう言った時は次のメニューをおすすめします。
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・クリスクロスインターバル(FTP+VO2max) 最短35分
WU:15-20分 3 x 1分の高回転走を入れて足を目覚めさせよう。
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MS1:15-20分 クリスクロス
クリスクロスは乳酸処理の能力を向上させるトレーニング。
SST(88-92%FTP)で巡航。
ただしその間、2分に1回30秒間FTPの120%までペースを上げる。
30秒が経過したら、もとの88-92%に戻す(しかし85%以下に下げてはいけない)。
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CD:5-10分
このトレーニングなら最短35分で遂行可能です。
また前述のFTP/VO2maxトレーニングのレスト時間を削るのも一手ですね(より短い時間で、より苦しむことができます!)。
■睡眠かトレーニングか?
睡眠時間を削ってまでトレーニングすると翌日以降のトレーニングに影響してしまいます。
また寝る直前に「フルもがき」してしまうと寝つきが悪くなる場合が多いですから、忙しい日のトレーニングは睡眠時間を削らない程度にとどめて翌日以降に頑張る方が得策だと思います。
■疲れている日もトレーニングすべきか?
「仕事で疲れて帰宅してもトレーニングは行うべきか?」というご質問も良く受けます。
オフィスワークなどで頭が疲れている時は、いったんバイクに乗ると意外に走れることも多いものです。脳は疲労していますが実際体はそれほど疲労していないからです。取りあえずバイクに跨ってみて、アップ終了後に足が軽くなってきた場合は、メニューを実行。規定のパワーゾーンに入れない場合は流しに切り替えるのが良いかと思います。
回復のメニューの場合は、血流を促すことで回復させる目的ですからひと汗かいて爽快感がありそうなら実行。疲労の上乗せになる感じがあれば、その日のトレーニングはスキップして早く就寝する方がベターです。
年末年始を乗り切り、良い2017シーズンのスタートが切れるように願っています!
■寄稿者:中田尚志コーチ(Peaks Coaching Group Japan)
Peaks Coaching Group Japan 代表。Peaks Coaching Group エリートレベル認定コーチ。2013年全米自転車競技連盟パワートレーニングセミナーを修了。2015年にトレーニングピークスユニバーシティを受講し、最先端のパワートレーニングを学ぶ。現在までに15,000以上のパワーデータを解析。2016年から京都を拠点に、パワーベースのコーチングを日本で展開する。自身も日本・アメリカでレース経験を持つレーサーでもある。コーチングの無料相談はこちら(→リンク)。