時間がない時のトレーニングをどうするべきか? Part2
そろそろ2017年のレースカレンダーも確定しつつあるこの時期、今シーズンの活躍を誓って乗り込みをしている選手も多いと思います。しかし、短い日照時間・不順な天候・期末に向けての仕事など何かとトレーニングを妨げる要因が多く満足に距離を稼げないのがこの時期です。年末年始に食べ過ぎて太った上に乗り込みが出来ず焦っている選手も居るかもしれません。アメリカでは、ハロウィン・サンクスギビング(感謝祭)・クリスマスのホリデーシーズンを越えて「ヤバい太った!」とコーチに電話してくる選手が増える時期です。そこで今日は「時間がない時のトレーニングをどうするべきか?」のPart2を書きたいと思います。
話は逸れますが、日本の選手はダイエットを頑張るあまりパワーを落としている選手が多いと感じます。ダイエットはあくまで実出力(アブソリュートパワー:absolute powerといいます)を落とさず、体重を減らしてパワーウエイト・レシオをあげないと意味がありません。体重と同時にパワーも落としてしまっては全体的なパフォーマンスの向上は望めません。あくまでパワーを落とさずに体重を減らすのが重要です。また欧米のコーチはよく「痩せろ」と言いますが、それは欧米人は日本人よりカロリー摂取量が多く太りやすい事も忘れてはならないと思います。
■乗り込みの時間が取れない場合のトレーニング
乗り込みはFTP以下の強度での走り込みを指します。有酸素運動のパワーを上げ、体調を整え、FTP以上のトレーニングを行う土台になります。これをエアロビックベースの構築と言います。
■無酸素は有酸素に代えられない
時間がない場合はトレーニングの強度を上げて時間当たりのTSS・kJを上げるのが有効です。
要するにトレーニングの密度を上げる訳です。
しかし、時間がないからと言って"モガキ倒せば良い"わけではありません。エネルギー代謝から言って無酸素運動を有酸素運動に代える事は出来ません。あくまでエアロビックベースは有酸素領域で構築しなければなりません。その為、エンデュランス領域での乗り込みに代わる強度の上限はテンポ~SST(88-94% of FTP)になります。
■テンポを増やす
プロ選手の場合、2月から始まるシーズンに向けて12月はエンデュランスやテンポをこなし、1月になると更にFTPやVO2Maxのトレーニングも取り入れて行きます。
プロはエンデュランスゾーンで6時間も走ってエアロビックベースを作れますが、アマチュアの場合は、プロほどには乗り込む時間と体力がありません。この対策として乗り込みの強度を上げ、短時間で有酸素能力を刺激するのが有効です。テンポ(Power Z3 76-90%, HR Z3,RPE 3-4)は有酸素の上限に近い為、時間当たりの効果が高いです。ハンター・アレンの言う「パワートレーニング成功の秘訣は各パワーゾーンで過ごす時間の最適化」はここでも当てはまります。時間の無い選手は、テンポを増やし、持ち時間の中でパワーゾーンの割当を最適化するわけです。
※FTP 300W の選手のテンポの例
■テンポの方法
時間:最初は20分程度から始めて、回を追うごとに10分程度延ばして行きます。エリートの選手であればMax90分程行います。
パワーでの管理方法:20分以上の実走になると信号や起伏の変化もあります。テンポの管理にはNP※を使うのが有効です。テンポを行いNPがテンポのレンジに入っていれば、多少信号や起伏の変化があっても体に与える刺激はテンポの強度に入っていると考えて大丈夫です。
※NP(Normalized Powerノーマライズド・パワー)=もし一定ペースで走った時にどれぐらいのパワーになるかの想定値。NPは20分程度だと実際より高く表示されるので、20分程度のテンポであればレンジの上限に入るように頑張りましょう。
■テンポのダイエット効果
テンポは乗り込みの代りになると共に副産物として、ダイエット効果があります。時間当たりの消費エネルギー量が大きく沢山のカロリーを消費出来るからです。
強度が高ければ高いほど時間当たりの消費エネルギー量は多くなりますが、FTPを超えると持続時間は急に短くなります。有酸素運動のテンポは強度を確保しつつ、長く続けることが出来るので結果的に消費エネルギーを増やすことが出来るのです。
下のグラフはテンポ(82% of FTP)・エンデュランス(66% / 56% of FTP)の消費エネルギーを比較したものです。例えばFTP300Wの選手がテンポ(246W)で40分巡航すると600kJほど消費出来ます。それは低いエンデュランス(56%,168W)の60分のエネルギー消費に匹敵します。エンデュランスで60分のエネルギーをテンポでは40分で消費出来ますから、単純計算で時間を2/3に短縮出来るわけです。
寒さの厳しい日が続きますが、テンポを活用して上手く乗り込みを乗り切って頂きたいと思います!
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■寄稿者:中田尚志コーチ(Peaks Coaching Group Japan)
Peaks Coaching Group Japan 代表。Peaks Coaching Group エリートレベル認定コーチ。2013年全米自転車競技連盟パワートレーニングセミナーを修了。2015年にトレーニングピークスユニバーシティを受講し、最先端のパワートレーニングを学ぶ。現在までに15,000以上のパワーデータを解析。2016年から京都を拠点に、パワーベースのコーチングを日本で展開する。自身も日本・アメリカでレース経験を持つレーサーでもある。コーチングの無料相談はこちら(→リンク)。