リアルタイム・インターバル・インテンシティ機能を活用した、時短トレーニング方法 ~限られた練習時間の中で、練習効果を最大化させるためのアプローチ~

【トレーニングメニュー】【期分け・練習計画】2017年7月10日 13:00

サイクリスト・トレーニング・バイブル

 

サイクリストとしての潜在能力を限界まで開花させるには、通常は長期間(少なくとも数年)にわたって練習を継続し、かなりの練習量を積み上げる必要がある。しかし、社会人や学生であれば、仕事・勉強などにより練習時間が限られ、これが最大のリミッターとなる場合が少なくない。しかし、練習時間が短いのであれば、その分「強度」を上げることでトレーニングの質を高めて時間の制約を補うことができる。今回は、限られた練習時間の中で、練習効果を最大化させるのに役立つ、「リアルタイム・インターバル・インテンシティ」機能を活用した、時短トレーニング方法を紹介する。

 

■リアルタイム・インターバル・インテンシティとは?

リアルタイム・インターバル・インテンシティとは、パイオニアのサイクルコンピューター「SGX-CA500」に搭載されている「自分の限界に対する追い込み度合い」を確認できる優れた機能だ。Cyclo-Sphereと同期していれば、過去3ヶ月分のMMP(平均最大パワー)を参照して、任意の持続時間での出力がMMPに対してどの程度の割合かを%で表示してくれる。例えば過去3ヶ月間に、1分間に出した最大パワーが450Wであったのに対し、今日行った1分間の全力走が393Wであった場合のリアルタイムインターバル・インテンシティは「87.3%」となる(下図を参照)。

 

■リアルタイム・インターバル・インテンシティの適正な目安は70~90%

ただし「常に自分の限界であるMMPにチャレンジすればよい」というわけではない。特に数分位内の短時間のインターバルで、余りにも頻繁に自分の限界まで追い込みすぎると、体が変調を来す場合がある。また、体調には波があるので、長期にわたって毎回MMPに挑戦し更新し続けということはまずあり得ない。「MMPに挑戦しては失敗」という負のサイクルが何度も続くと、「自信」や「やる気」の喪失につながりかねない。これらは、トレーニングの最重要ポイントである「継続性」に深刻な影響を及ぼす「燃え尽き」につながるリスクがある。

それでは、リアルタイム・インターバル・インテンシティの適正な目処値はどの程度なのだろうか。公式サイトでは、「70~90%」が推奨されている(詳細、以下を参照)。体調に応じて70~90%の範囲内で追い込み、数ヶ月に1回程度、成長を確認するためにMMP更新にチャレンジするとよいだろう。

・データフィールド内にリアルタイム・インターバル・インテンシティを追加しました。
- 本機能はトレーニングの強度をリアルタイムに表示する新しい指標です。
- 高いパワー値で短時間、低めのパワー値で長時間のトレーニングを実施する際に、本機能の数値を到達目標とすることで簡単にパワートレーニングが可能となります。
- 70~90%を目標にトレーニング強度と持続時間の目安としてご活用ください。
ライダーセッティングに設定されているMMPパラメーターのそれぞれの時間に対して、リアルタイムに平均パワーを計算し、MMPとの比率(インターバル・インテンシティ)のうち、最も高い比率を時間と共に表示します。
データフィールドの左下の持続時間は最もインターバル・インテンシティが高い時間に自動で更新されます。
持続時間に応じて数値が高くなり、MMPを更新するときは100%となります。
- 下記のカテゴリーから選択肢表示することが出来ます。
◇データフィールド:数値
◇データカテゴリー:パワートレーニング
◇データタイプ:リアルタイムインターバル・インテンシティ
- ご注意
◇ご利用にはパイオニア製ペダリングモニターセンサーまたはANT+パワーメーターが必要です。
◇MENU-設定-ライダーセッティングのMMPの各時間を設定してください。
◇MENU-オプション-Wi-FiコネクトからCyclo-Sphereと同期をすることで、蓄積されたログデータから過去3か月分のMMPパラメーターをダウンロードすることができます...

出典 Pioneer:SGX-CA500 ファームウェアアップデートのお願い

 

■適正な持続時間は?

リアルタイム・インターバル・インテンシティを活用すれば、限られた時間の中で負荷の適正化が期待できる。しかし、ここで問題になるのは、持続時間の設定がいい加減では練習の質を最大限まで高められない点だ。サイクリスト・トレーニング・バイブルの著者であるジョー・フリールは、「最高に質が高い練習メニュー」について以下のように説明している。

レースのパフォーマンスを決めるのは「練習量」ではなく「質の高い練習」(中略)
「質の高い練習」とは、目標とするレースの強度や持続時間や地形などといった要素を含んでシミュレーションするような練習メニューのことといえる。これには、以下の3種類がある。
・特定の強度に焦点をあてたもの
・特定の持続時間に焦点をあてたもの
・特定の強度と持続時間を組合せたもの
「特定の強度に集中した練習メニュー」と「特定の持続時間に集中した練習メニュー」は、比較的取り組みやすいだろう。一方で「特定の強度と持続時間を組合せた練習メニュー」は、かなりきつく難易度が高くなる。しかしこれこそが「最高に質が高い練習メニュー」といえるもので、取り組む価値は十分にあるだろう...

出典 じてトレ:「質の高い練習」とは ~「最高に質が高い練習メニュー」とは~

 

つまり、レースでのパフォーマンスの最大化を狙うのであれば、最重要レースで重要になると推定される持続時間と強度を反映したメニューに取り組む必要がある。この時参考になるのが、最重要レースのコースプロファイルや、自分のリミッター(目標とするレースに特有の弱点)だ。

例えば5分間程度かかる上りが勝負の分かれ目となるロードレースが目標レースであれば、メニューの持続時間は5分間とするのが妥当だろう。また、ヒルクライムが主戦場で、FTPの低さがリミッターになっているのであれば、練習では10~20分間を目処に追い込むとよいだろう。

 

■注意点

時短トレーニングでは、時間単位あたりの練習効果が低い「低強度で無目的なトレーニング(ジャンクマイル)」は極力カットすることが望ましい。しかし、ウォーミングアップやクールダウンは、練習効率の向上や怪我予防・疲労回復促進の観点から、省略することはおすすめできない。最低でも、ウォーミングアップに10分、クールダウンに5分程度を確保することを前提に、トレーニング時間を設定することをおすすめする。

また、特定の持続時間と強度でだけトレーニングをしていても総合的な実力の底上げにはつながりにくい。ロングライド、スプリト、コーナリングなど様々な能力にも刺激を入れていくことで、練習を楽しみながら更なる成長が実現できるだろう。

 

サイクリスト・トレーニング・バイブル