PAP(活動後増強)を利用したスプリント練習
レースやチーム練習でかなり追い込んだ直後に「普段単独で練習していると『きつい』と感じるパワーを維持するのが楽に感じる」といった経験をしたことがないだろうか。これはPAP(Postactivation potentiation:活動後増強*)とよばれる「事前に筋収縮を起こした後、筋収縮がより増強されるしくみ」によるものと考えられる。他の例を挙げると、10秒間限界に近いレベルで筋収縮をさせた後に、素早く強く筋収縮をさせるような動きをすると、「同じきつさ(主観的運動強度)であっても、より速く・力強い動きができるようになる」のもPAPの効果と考えられる。今回は、このPAPを利用したスプリント能力強化のための練習方法を『MAXIMUM PERFORMANCE FOR CYCLISTS』を参考に紹介する。
*「瞬発的な力の発揮に対するパフォーマンスを高める効果がある」という研究結果が近年増えている「ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)」も、PAPのメカニズムによるものだといわれている。
PAPを利用したスプリント練習
■適した地形
アウターでぎりぎり踏める程度の傾斜のきつい坂で、坂を上りきったところが平坦でスプリントができるような場所
■行い方
- ウォーミング・アップ後、まずは平坦路でスプリントを行いパワーを記録する(インデックス・スプリント)。
- 次に傾斜のきつい坂を、ぎりぎり踏めるくらいの重いギアで20秒間・高負荷・低ケイデンスで上る。
- 坂を上りきったところで15秒間楽に足を回す。
- 再度スプリントを行い、インデックス・スプリントと比較する。
(通常は、2回目のスプリントの方が、インデックス・スプリントよりもパワーやスピードが増す)
■注意点
- 2回目のスプリントがインデックス・スプリントよりもパワーやスピードが低い場合は、回復時間が足りていないと考えられる。その場合は、30秒~3分程度まで回復走の時間を延ばす。
- 高負荷・低ケイデンスで坂を上る時に膝に大きな負担がかかるので、ウォーミング・アップは入念に行う。また膝に不安がある場合は行わないほうが無難。
参照URL
- 第61回スポーツサイエンス研究会・『活動後増強効果が最大随意短縮性トルクに及ぼす影響』
http://www.waseda.jp/sports/supoka/research/meeting61.html
参考文献
- MICHAEL J. ROSS, M.D.著・『MAXIMUM PERFORMANCE FOR CYCLISTS』・P80~83
- 長畑芳仁著・『ストレッチまるわかり大辞典』・P212~213・ベースボール・マガジン社