効果的にアタックするためのコツ
ツール5勝を始めとして多くのタイトルを獲得した伝説的なロード選手であるベルナール・イノーは、アタックについて「アタックが決まるか他の選手があきらめるまで、繰り返し繰り返しアタックをしろ」という言葉を残している。実際アタックはそうかんたに決まらないので、成功するまで繰り返し仕掛けないといけないことが多い。しかしやみくもにアタックするよりは、タイミングや場所を見計らい効果的にアタックしたほうが、成功率は高くなるだろう。今回は効果的にアタックするためのコツを『Cycling FAST』などを参考に紹介する。
効果的にアタックするためのコツ
■レースの後半でアタックする
アマチュアのレースではレース前半でアタックを仕掛けても、チームの仲間が組織的にブロッキングするなどして協力してくれない限り、結局集団に吸収されてしまうことが多い。単独でレースに参加しているのであれば、レース後半でアタックした方が、好結果に結びつきやすいだろう。
■疲れている時にアタックする
レース後半になるとどうしても疲れてくる。「疲れている時にアタックすべきかどうか」と迷うかも知れないが、レース自体がそもそも疲れるものなので、勝負をかけるべきタイミングを察知したならばアタックしたほうがよいだろう。また自分が疲れている時は周りの選手も「きつい」と感じていることが多いので、アタックが決まる可能性は少なくない。迷っていてはアタックできないので「アタックして逃げるのも、集団の中に残るのも、肉体的・心理的にきついのは同じだ」と自分に言い聞かせるとよいだろう。
また集団のペースがかなり速い時にさらに加速するというのも効果的な方法のひとつだ。いわば厳しいセレクションを仕掛けるわけで、多くの選手が「これ以上ペースを上げたくない」と脱落していくので、アタックが決まりやすい。
他には、逃げ集団をかなり速いペースで追い「ようやく追いついた」と集団のペースがゆるんだタイミングも、大部分の選手が疲労しているので、カウンター・アタックのチャンスといえる。
■アタックが決まりやすい地形を選ぶ
同じパワーを使っても、あっという間に後続との差を広げやすい地形もあれば、いくら仕掛けてもすぐさま集団にキャッチアップされてしまうような場所もある。アタックを決めやすい場所の代表例は以下の3種類だが、試走の際にこれらがコース中のどの辺りにあるかをチェックしておけば、アタックするかどうかの判断にきっと役立つだろう。
- 急勾配の坂
- 急角度で道幅の狭いコーナー
- 見通しの悪い狭い道
■ライバル選手の虚を突く
アタックを成功させるには、ライバル選手に「この選手はアタックしようとしているな」と事前に察知されていないことが重要になる。うまくライバル選手の虚を突くことができれば反応が遅れ、アタックが決まる確率が高まる。そのためには地形も考慮しつつ、ライバル選手が「ここでアタックはないだろう」と思っている(と思われる)タイミングを見計らってしかけるとよいだろう。
■いったん後方に下がってから加速する
ライバルに気配を悟られずにアタックをするには、相手の視界が届かない後ろから仕掛けるのが常套手段だが、その際に単純に真後ろから加速するのではなく「いったん2~3m程後方に下がり、そこから一気に加速する」と効果的だ。いわば助走をつけることで、ライバルを抜き去る時の速度差を大きくするわけだ。こうすることで真後ろからアタックする時よりも3~5㎞/h 速いスピードでライバルを追い抜くことができる。この速度差が大きければ大きいほどライバルは急加速が必要になるので、アタックが決まる可能性が高まるだろう。
参考文献
- Robert Panzera著・『Cycling FAST』・P126~128・Human Kinetics社
- Edmund R. Burke, PhD著・『SERIOUS CYCLING Second Edition』・P22~23・HUMAN KINETICS
- Chris Carmichael AND Jim Rutberg共著・『The Time-Crunched Cyclist』・P155~P159・Velopress