筋グリコーゲン切れを防ぐ4つのアプローチ

【レース対策情報・レース戦術】2012年7月4日 07:00

レースなどで足が売り切れるのは「筋グリコーゲン切れ」が主な原因といわれている。筋グリコーゲンがなくなると「短時間高強度に対応するための主要エネルギー源不足」に直結するので、アタックがかかった時などに反応ができなくなる。また筋グリコーゲンは脂肪の燃焼に必要な着火剤の役目もあるので、これが枯渇すると脂肪をエネルギー源として使えなくなり、低強度の運動を継続するのも困難になってしまう。また筋グリコーゲンがなくなると、筋肉を動かすためのカルシウムイオンに関する仕組みが正常に動かなくなり、足が動かなくなってしまうともいわれている。■この記事は、旧サイトからの移行分です(2011.10.10の記事です)■

 

筋グリコーゲン切れを防ぐアプローチ

筋グリコーゲンは一度使ってしまうと回復には時間がかかるので、いかにグリコーゲン切れを防ぐかが、レースで最後の勝負に絡めるかどうかに関わってくるといえるだろう。グリコーゲン切れを防ぐ方法としては、以下の4つのアプローチが考えられる。

  • グリコーゲンの貯蔵量を増やす
  • グリコーゲン以外のエネルギー源の使用比率を上げる
  • グリコーゲンを節約する走りをする
  • 運動前や最中に炭水化物や糖質を摂取する

 

グリコーゲンの貯蔵量を増やす

■グリコーゲン・ローディング

有名なアプローチは、グリコーゲン・ローディングだろう。これは人為的にカロリー摂取源の種類の比率を調整(炭水化物の比率を上げる)することで体内のグリコーゲン量を増やす方法だ。

■トレーニングで筋グリコーゲン貯蔵量を増やす

また練習で筋グリコーゲン貯蔵量は増大させることもできる。これが最大化する負荷はL3・テンポ走(FTPの76~90%)といわれている(その次がL4・LT:FTPの91~105%)。

■体重増加につながる点は注意が必要

筋グリコーゲンの貯蔵量増大を狙う場合の注意点は、グリコーゲンは2.6倍の水と一緒に貯蔵されるので「体重の増加につながる」という点だろう。その意味ではヒルクライムなどには不向きかも知れない。

 

グリコーゲン以外のエネルギー源の使用比率を上げる

■FTPが上がると同じパワーでの脂肪利用比率が高まる

グリコーゲン以外のエネルギー源の代表格は脂肪であるが、FTP強度までは脂肪の利用比率が高いといわれている。つまりFTPが高くなれば、結果ととして同じパワーを出したとしても脂肪の利用比率が高まり、グリコーゲンの消費量が少なくなる。これが「ロードレーサーにとって一番大事なのはFTPを上げること」といわれる理由のひとつだろう。

 

グリコーゲンを節約する走りをする

■即効性がある方法

即効性があるのは運動中に、グリコーゲンの節約を意識した走りをすることだ。具体的には次のような方法があるが、今まで意識したことがないようであれば、それなりの効果が期待できる。

  • FTP超のパワーを長時間出し続けないようにする(FTP超を一瞬出したとしてもなるべく早くそれ以下に落とす)
  • FTP超のパワーをは極力出さない(無駄に集団の先頭を長く引かない)
  • パワー変動を少なくする(上りでは抑え目に、平坦や下りでしっかり踏む)
  • 軽いギア中心に低トルク走行を心掛ける(パワーを上げる際は極力ケイデンスを上げて対応する)
  • 集団の中で空気抵抗が最小の位置に潜む(なるべくペダルを漕がない・目標は全レース時間の15%以上)

同じFTPの人達と勝負するのであれば、こういったエネルギー節約戦略を意識するのとしないのとでは、勝負どころで注ぎ込めるエネルギー源(グリコーゲン)の差はかなりのものになるだろう。

 

運動前や最中に炭水化物や糖質を摂取する

■デキストリン摂取により運動持続時間が向上する

また長時間の運動前にしっかり炭水化物中心の食事を摂り、運動の最中にも、こまめに糖質中心の補給を取ることも筋グリコーゲンの減少ピッチを遅らすことができるといわれている。糖質の中でも「デキストリン」は「消化吸収が早く血糖値の変動が少ない」という長所があり、科学実験でもデキストリン摂取により運動持続が向上することが確かめられている。デキストリンで入手しやすいのが、マルトデキストリンで、Amazonや楽天(商品名:粉飴)でかんたんに買える。これを使えば格安のエネルギードリンクを自分で作ることができるので、利用してみるのも一案だろう。

 

参考文献

  • ふじい のりあき著・『ランニングの科学』・P45-47・スキージャーナル株式会社