上りでの戦術やコツ
アップ・ダウンを含むコース・レイアウトのロード・レースで勝負の分かれ目になることが多いのが「上り」だ。L4~6のパワー・ウェイト・レシオが十分であれば大抵は対応できるだろうが、上りでの戦術やコツを熟知していれば「無駄に高出力を出す必要性」を減らすことができる。また仮に周りの選手に比べて多少パワー・ウェイト・レシオが劣っていたとしても、集団から千切れるリスクを減らすことができるだろう。今回は『Cycling FAST』を参考に、上りでの戦術やコツを紹介する。
上りでの戦術やコツ
1.コーナー後すぐ上りがある場合は先頭付近に位置取りする
コーナー後すぐ上りがあるような地形の場合、集団の後方にいると、コーナーで集団が減速しやや渋滞気味になっている間に先頭とのギャップが大きく開いてしまうことがある。いったん開いたギャップを埋めるのにはかなりの高出力が必要になるが、先頭付近にいればこれを防げる。
2.上りに入る前にインナーギアに落としておく
上りでフロントをアウターのまま入り、坂の途中でリアのギアをこれ以上軽くできなくなってからフロントをインナーに落とすと、チェーン落ちのリスクが高くなる。インナーギアに落とすことがあらかじめわかっているのであれば、坂に入る前にインナーに落としておけば、かなりの確率でチェーン落ちを防げるだろう。
3.上りに入ったら速やかに先頭との差を埋める
上り区間が終了し先頭集団が加速を開始した時に集団後方でまだ上っていると、先頭との差がみるみる開いてしまい追いつくのがひじょうに難しくなってしまう場合がある。これは、上りに入ったら速やかに先頭との距離を詰めることで防げる。ただし先頭が頂上を通過するまでに追いつけばよいので、坂の長さに応じて一定のペースで差を詰めていくほうが、足へのダメージは少ないだろう。
4.頂上付近では速いペースを保つ
先頭は後続よりも早いタイミングで加速を始めるので、遅れを取らないためには頂上付近でも速いペース(高い出力)を維持する必要がある(上りが終わってからといって踏むのを止めてはいけない)。
5.深く呼吸をする
なるべくリラックスして深く呼吸し、心拍数をコントロールするよう心掛ける。
6.短い上りでは最初から先頭付近に位置取りする
短い上りで集団の後方にいると、先頭が下り始めるまでに差を詰める時間がほとんどない。先頭が下り始めてかなりギャップが大きくなってしまうと、キャッチアップが不可能になるケースもある。上り始めから先頭付近に位置取りしておけば、こういった状況を回避できる。
7.長い上りでは無理をしすぎない
長い上りで、明らかにオーバー・ペースで飛び出していった選手に無理をしてついて行くと、自分も完全に息が上がっり共倒れになってしまうリスクがある。レースの局面にもよるが、長い上りでは自分の能力を信じて「限界ギリギリのペース」を維持したほうが最終的によい結果に結びつく可能性が高いだろう。
8.上り始めのタイミングでは常に先頭付近に位置取りする
上り始めから先頭付近に位置取りしておけば、仮に集団のペースが自分にとって速すぎてジリジリと順位を下げることになっても、上り切った時点で集団の中に留まっていられる可能性が高まる。
9.アタックをかける(他の選手のアタックに注意する)
上りはアタックに最適な地形のひとつなので、コース上での上りの位置や長さを頭に入れておくことが重要になる。チャンスがあればアタックし、また他の選手がアタックをかけた場合にすばやく反応できるように注意する。
10.下りは先頭付近に位置取りする
下りでは集団の先頭付近(先頭ではない)に位置取りしたほうが、落車のリスクを下げられる。
参考文献
- Robert Panzera著・『Cycling FAST』・P115~116・Human Kinetics社