アルコールのマイナスの影響
ロード・レーサーは、過度にアルコールを摂取しないほうがよいといわれている。これはなぜなのだろうか。
アルコールのマイナスの影響
■無酸素持久力と有酸素持久力が低下する
ランナーを対象にした研究では、アルコール摂取によって800m走と1,500m走のいずれもパフォーマンスが低下したとの結果が出ている。これは、無酸素持久力と有酸素持久力にとってマイナスの影響があることを示している。このマイナス効果は、摂取量増加にともなって大きくなる。
■知覚神経の働きが低下する
アルコールの摂取によって、反応速度が遅くなり、手と眼の連携などといった知覚神経の働きが鈍くなることが知られている。
二日酔いで体内にアルコールが残っていると、レース中にとっさの対応が求められる局面で、自転車のハンドリングなどに悪影響が出る可能性があるだろう。
■回復の遅れにつながる可能性
激しい脚のトレーニングを行った後90分の間に、オレンジジュースかスクリュードライバーのいずれかを飲んでから眠る実験では、スクリュードライバーを摂取した場合のほうが、筋力損失が1.4~2.8倍程度大きいとの研究結果となった*。
また練習後にアルコールでカロリーを摂取した分、炭水化物の摂取量を減らした実験では、炭水化物の体内への再貯蔵が大幅に遅れるとの結果が出ている。
*ただしこの実験の被験者の体重は87.6㎏とかなり大柄で、飲酒量はアルコール度数5%のビール6.5本分相当にした。アルコール摂取量をこの実験の半分の量に抑えた実験では、筋肉の回復に差がなかったという結果が出ている。
適切な量であれば大きな影響はない
ただし、一般的には「一晩に1~2杯飲む程度であればパフォーマンスに影響しない」といわれており、それを支持するような研究結果もある(上記「*」の研究結果をご参照)。
その意味では、自分のアルコール耐性**を踏まえ、強度の高い練習前後には、アルコール摂取量を「適量」に抑えればパフォーマンスに大きな影響はないだろう。
ただし重要レース前で「万全を期したい」場合や、翌日もハード・トレーニングの予定があり「少しでも速く回復させたい」場合は、アルコール摂取を控えたほうが無難といえそうだ。
**アルコールの分解能力には個人差が大きい
参考文献
- メルビン・ウィリアムス著, 樋口満監訳・『スポーツ・エルゴジェニック』・P138~140・大修館書店
- アレックス・ハッチンソン著, 児島修訳・『良いトレーニング、無駄なトレーニング』・P220~223・草思社