■■本場フランスのアマチュアレース第1回「前で展開しなくてはならない理由」■■
本場フランスのアマチュアレース第1回「前で展開しなくてはならない理由」
Text by KINAN AACA チーム代表 加藤 康則
はじめまして、KINAN AACA チーム代表者の加藤康則です。今回から、本場のアマチュアレース展開における様々な情報をこの場で紹介させていただくこととなりました。
■フランスのアマチュアレースの現場に4シーズンいた経験
(上)2004年、エリートレースでカテゴリー優勝した際の写真。中央、赤いウェアであごひげを生やしているのが加藤さん。右隣の赤いウェアは当時のチームメイトの宮澤崇史選手(現:サクソ-ティンコフ)、白いウェアは、新城幸也選手(現:ユーロップカー)。
私は20代前半のころに、強くなりたくて、本場でプロになりたくて武者修行ならぬ「ムチャ修行」のためにフランスのアマチュアレースの現場に4シーズンいました。
その時の体験は鮮烈で、本場フランスと日本では同じロードレースでも、まるで別競技のようでした。
この連載では「一体何がそんなに違うのか?」「本場フランスでも通用するようなロードレーサーになるには、どんなレース展開をすべきなのか?」といったことを、体験談形式でわかりやすくお伝えすることで、何かしら今後の皆様の競技人生のお役に立てればと思っています。
■日本のアマチュアレースのレース展開を本場フランスのレース展開と同じようにアグレッシブなものに変えていきたい!
最初にお伝えしておきたいことは「本場のレースはもっときついが、もっと楽しい!」ということです。
今、私は、日本のアマチュアレースのレース展開を本場フランスのレース展開と同じようにアグレッシブなものに変えていきたい!と強く思っています。
この連載から、自転車ロードレースが皆様にとって今よりもっと楽しいものに、感じて頂けたら幸いです。これからどうぞよろしくお付き合い下さい。
第一回目は、ご存知の人も多いかと思いますが、「前で展開しなくてはならない理由」です。
注:このコラムに書く内容は私自身の体験をもとに私の主観に基づいて書いていますのでその点、ご容赦ください。
フランスのレースでの洗礼
■初めてのフランス遠征、夜クリテ:70km
2001年、当時の私ことカトー少年(22歳、すでに少年って歳じゃないですね)は、所属していたエキップアサダのチーム活動予定の中で、初めてフランス遠征に参加しました。レース経験は日本のロードレースのみで、フランス語なんてまったく話せませんでした。そんな少年がフランスのレースを走りました。
夕方19:00スタートするクリテリウム(2km×35周=70km)で、サマータイムの影響もあって日が長いのでぎりぎり日が暮れる前にゴールする、「夜クリテ」ともいえるレースでした。
■チームメートのアドバイス
チームメートで一つ年上の先輩Tさんには言葉から何から何までお世話になりっぱなし・・・。そのTさんが、フランス人のチームメートにもらったアドバイスを僕に通訳してくれました。
「今日のコースは立ち上がりがきついから絶対に前で展開するように!」
これを聞いて、
「ふ~ん。そっか。まぁはじめのうちは様子見て中盤から後半にかけて前に上がればいいか」
と、この時はそこまでこの言葉の意味を深く考えずにレーススタートしたのですが・・・。
結果は、開始5周で千切れて終了。
「まじで?」
と自分のことながら、思わず絶句してしまいました。
■レース展開
レースが始まると途端に、きついきついきつい!集団の前方に上がっていこうとしても、ペースが上がり始めたら集団は長く伸びまくってそれどころではなく、コーナー手前は詰まるけど前に上がるようなすき間はありません。
そうこうする内に、アタックと牽制を繰り返す集団から僕が千切れてちょっとしてから、勝ち逃げが決まり、なんとそのまま4人が逃げ切ってしまったのです。
「レース開始早々に決まった逃げがそのままゴールまで行ってしまうなんて・・・」
そして四人の中にはなんとチームメートが入っていました!
「彼と自分の違いって?」「この前一緒に練習した時はここまでの差を感じなかったのになぜ!?」
■集団の前方で展開しないといけなかった理由
なぜこのような結果になってしまったのでしょうか?
最大の理由のひとつは、今回のコースはコーナーが多く、その上コーナーの入りが狭い、かなり減速して一人また一人といった感じにしか立ち上がっていけないコースレイアウトだったことです。したがって集団の後方へ行けば行くほどコーナーに入る手前で減速を強いられてしまいます。
立ち上がり、先頭の選手は自分のラインを保って自分のペースで立ち上がって行きますが、2番手以降の選手はギャップを埋めるべくもがくことを強いられます。
■2番手の選手
コーナーの立ち上がりで出来た先頭の選手とのギャップを埋めて先頭の選手の後ろに着きます。コーナーのライン取りがよっぽど下手でない限り先頭の選手に着くためにもがく距離は少ないでしょう(下図を参照)。
■3番手の選手
ギャップを埋めるための動きは2番手の選手と同じですが、3番手の選手は前の2番手の選手の作ったギャップと自分の作ったギャップの分だけもがかなければなりません(下図を参照)。
■4番手の選手
勘の良いひとはもうお気づきですね?後ろに行けば行くほどもがく時間が長くなって行くんです。4番手の選手で、すでに2番手の選手の約3倍もの時間をもがかなければ先頭に追いつけません(下図を参照)。
コーナーを時速30kmで走っていた先頭が立ち上がってそのまま時速30kmでゆっくり走っていてくれることなどまずありえません。そんな場面は距離の長いロードレースで、逃げが決まっていて後ろの集団で牽制が入っているときくらいでしょうか。クリテリウムというレース形態ではなおさらです。
■50番目の選手
50番目に立ち上がる選手のもがく時間といったら。。。先頭と同じペースで走っている集団の最後尾に追いつくだけでも、かなりの時間をもがかなくてはいけないでしょう(下図を参照)。
■身をもって体験したアドバイスの本当の意味
フランスに渡ったばかりの僕はそれを知りませんでした。日本のロードレースでは鈴鹿サーキットや修善寺の日本CSCといった単調な道端の広いコースばかりでしたから。
チームメートからもらったアドバイスの本当の意味を身をもって体験することになりました。
まとめ:集団の前方で展開するのは鉄則
本場フランスのアマチュアレースは基本的に公道で行われるため、様々なコースがあります。突然道端が狭くなるような場合は、後ろにいると立ち上がりでものすごくたくさんもがかなければならなくなってしまいます。
まとめ:集団の前方で展開するのは鉄則■